知的財産権 ITパスポート対策ストラテジ系-企業と法務編⑤
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2023-10-122023-09-28
知的財産権とは
人間の知的活動によって生じた技術、デザイン、アイデアなどの無形物に対する財産権が知的財産権です。
主な知的財産権には以下のものがあります。
特許権 | 自然法則を利用した高度な発明を保護 |
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実用新案権 | 物品の形状等に係る考案を保護 |
意匠権 | 工業的な意匠(デザイン)を保護 |
商標権 | 商業で使用されるトレードマークを保護 |
著作権 | 思想・感情の創作的表現を保護 |
著作権
著作権は思想や感情を創作的に表現したものである著作物に対する権利です。
著作権は、著作権と著作者人格権から成り、氏名表示権、公表権などからなる著作者人格権は他人に譲渡することのできない権利となっています。
また、俳優や歌手など著作物を様々な手段で伝達する人々にも一定の権利(著作隣接権)が発生します。
著作権の発生条件と対象
特許権などの産業財産権とことなり、著作権は登録不要で著作物を創作した時点で発生します。
著作権の対象となるといえば、音楽,動画,漫画などの文化的な創作物が思い浮かびますが、ソフトウェア、プログラムなども保護の対象となります。
保護の対象となる | プログラム、データベース、ソフトウェア、マニュアル |
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保護の対象とならない | プログラミング言語、アルゴリズム、プロトコル |
保護期間
著作権の保護期間は原則として著作者の死後70年間となります。
著作物 | 保護期間 |
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一般的な著作物 | 著作者の死後70年間 |
団体名義の著作物 | 公表後70年 |
映画の著作物 | 公表後70年 |
職務著作
業務として作成した著作物(例えば企業に所属するデザイナーが仕事で作成したデザイン)は、特段の定めがない場合、使用者に帰属することになります。
同様に派遣社員が業務で作成したプログラムの著作権は、(派遣元企業ではなく)指揮命令権を持つ派遣先企業に帰属しますが、委託の場合は、実際に作成した委託先に帰属することとなるます。
著作権侵害
以下のような行為を著作者の許可を得ずに行うと著作権侵害となり損害賠償請求などを受ける可能性があります。
- 著作物を無断でWEB上にアップロードし、誰でも閲覧できる状態にする。
- 違法にアップロードされたものと知りながらダンロードする。
- 新聞記事をコピーして社内で掲示する。
- 他人の著作物を無断で公表する。
- 他人の著作物を許可を得ずに改変する。
一方、私的な利用、適正な範囲内での引用、教育における必要な範囲での利用などは著作者の許可を得ずとも行うことができます。
産業財産権
産業の保護、発展のために認められた知的財産権が産業財産権で、特許権、実用新案権、意匠権、商標権などがあります。産業財産権は著作権とはことなり権利を得るには登録の手続きを行う必要があります。
特許権(特許法)
自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度なものが対象となり、審査で認められれば出願から20年間その発明を独占的に実施することが可能になります。また、他者に所有する特許をラインセンスするといった使い方も可能となっています。
自然法則を利用した技術的思想が要件なので、ビジネスモデルなど人為的な取り決めには特許は認められませんが、ビジネスモデルを実施する際のITなどの技術的な工夫には特許が認められる場合もあります(ビジネスモデル特許)。
実用新案権(実用新案権法)
物品の形状,構造または組合せに係る,産業上利用できる新規な考案を対象とし、出願から10年間保護を受けることができます。
高度という要件がないので特許権の対象とならないような発明でも対象となりますが、「物品の形状,構造または組合せ」に限定されているため、方法の発明やプログラムなどは対象となりません。
意匠権(意匠法)
デザインを保護するための法律で、物品の形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合であって,視覚を通じて美感を起させるものが対象となります。期間は出願日から25年となっています。
商標権(商標法)
商品やサービスに使用する文字、記号、図案などの商標を保護する法律です。期間は登録日から10年間ですが、繰り返し延長することも可能です。
商品に使用する商標をトレードマーク、サービスに使用する商標をサービスマークといいます。
不正競争防止法
不正競争防止法は、不正行為を防止し、事業者間の公正な競争を促進するための法律で、著作権法や産業財産権関連法規では守られない、営業秘密、限定提供データなどを保護しています。
営業秘密(トレードシークレット)
秘密として管理されている生産方法、販売方法などの事業活動に有用な技術上または営業上の情報で公然と知られていないものを営業秘密といいます。
限定提供データ
業として特定の者に提供する情報として電磁的方法により相当量蓄積、管理されている技術上またが営業上の情報を限定提供データといいます。ID、パスワードなどの会員情報がこれに該当します。
ソフトウェアライセンス
ソフトウェアは、使用許諾契約(ライセンス契約)を結んで利用される場合があります。
出題可能性のある関連用語には以下のものがあります。
ボリュームライセンス契約 | を多数のライセンスをまとめて提供する契約形態。 |
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サイトライセンス契約 | 法人等を対象に複数人での使用を認める契約。 |
CAL(Client Access License) | サーバーのサービスにアクセスする権利を付与する契約。 |
フリーソフトウェア | 利用者が自由に使用、複製、改変、再配布などを行うことができるソフトウェア。著作権が放棄されているわけではない。 |
オープンソースソフトウェア | ソースコードが公開されているソフトウェア。著作権が放棄されているわけではない。 |
パブリックドメインソフトウェア | 著作権を放棄した状態で配布されるソフトウェア。 |
アクティベーション | 正規のライセンスを保持していることを確認するために行われる認証処理。 |
サブスクリプション | 月単位などで料金を支払うことで利用可能とする契約。 |
その他の権利
法律で明文化されているわけではありませんが、判例によって認められた権利に肖像権やパブリシティ権がります。
肖像権
無断で、正当な理由なく自分の顔や姿を撮影、描写、公表などされない権利。
パブリシティ権
著名人の肖像や氏名等の識別情報を利用することで商品の販売促進、顧客誘引などの効果が発生する場合に、その識別情報の有する経済的利益・価値を当該著名人が独占的に支配する権利。
簡単にいえば、芸能人の名前や写真を使って勝手に商品を売るのはダメだよということです。
確認問題(過去問)
ITパスポート試験令和3年問7
著作権法によって保護の対象と成り得るものだけを,全て挙げたものはどれか。
- インターネットに公開されたフリーソフトウェア
- データベースの操作マニュアル
- プログラム言語
- プログラムのアルゴリズム
ITパスポート試験令和4年問1
著作権及び特許権に関する記述a~cのうち,適切なものだけを全て挙げたものはどれか。
- 偶然二つの同じようなものが生み出された場合,発明に伴う特許権は両方に認められるが,著作権は一方の著作者にだけ認められる。
- ソフトウェアの場合,特許権も著作権もソースプログラムリストに対して認められる。
- 特許権の取得には出願と登録が必要だが,著作権は出願や登録の必要はない。
ITパスポート試験令和2年度問12
A 社では,設計までを A 社で行ったプログラムの開発を,請負契約に基づき B 社に委託して行う形態と,B 社から派遣契約に基づき派遣された C 氏が行う形態を比較検討している。開発されたプログラムの著作権の帰属に関する規定が会社間の契約で定められていないとき,著作権の帰属先はどれか。
ITパスポート試験令和元年問20
事業活動における重要な技術情報について,営業秘密とするための要件を定めている法律はどれか。
ITパスポート試験平成30年春問16
特許法における特許権の存続期間は出願日から何年か。ここで,存続期間の延長登録をしないものとする。
ITパスポート試験令和2年問16
新製品の開発に当たって生み出される様々な成果a~cのうち,特許法による保護の対象となり得るものだけを全て挙げたものはどれか。
- 機能を実現するために考え出された独創的な発明
- 新製品の形状,模様,色彩など,斬新的な発想で創作されたデザイン
- 新製品発表に向けて考え出された新製品のブランド名
ITパスポート試験平成31年春問20
実用新案権の保護対象として, 適切なものはどれか。
ITパスポート試験平成29年秋問35
カーナビゲーションシステムに関する知的財産権と保護対象の適切な組合せはどれか。
ITパスポート試験平成29年春問17
意匠権による保護の対象として, 適切なものはどれか。
ITパスポート試験平成28年春問23
知的財産権のうち、 全てが産業財産権に該当するものの組合せはどれか。
ITパスポート試験平成27年春問21
事業者の信用維持や需要者の混同を回避するために、更新の申請を繰り返すことで,実質的に永続的な権利保有が可能な工業所有権はどれか。
ITパスポート試験令和元年度秋期問20
事業活動における重要な技術情報について,営業秘密とするための要件を定めている法律はどれか。
ITパスポート試験令和4年問6
自社開発した技術の特許化に関する記述a~cのうち,直接的に得られることが期待できる効果として,適切なものだけを全て挙げたものはどれか。
- 当該技術に関連した他社とのアライアンスの際に,有利な条件を設定できる。
- 当該技術の開発費用の一部をライセンスによって回収できる。
- 当該技術を用いた商品や事業に対して,他社の参入を阻止できる。
ITパスポート試験平成29年秋問89
ソフトウェアの不正利用防止などを目的として, プロダクト ID や利用者のハードウェア情報を使って, ソフトウェアのライセンス認証を行うことを表す用語はどれか。
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