問題文正答率:50.00%
第1問 制限行為能力者の行為であることを理由とする取消しに関する次のアからオまでの各記述のうち,誤っているものを組み合わせたものは,後記1から5までのうちどれか。
- 未成年者がした売買契約は,親権者の同意を得ないでした場合であっても,その契約が日常生活に関するものであるときは,取り消すことができない。
- 成年被後見人がした売買契約は,成年後見人の同意を得てした場合であっても,その契約が日常生活に関するものであるときを除き,取り消すことができる。
- 被保佐人がした保証契約は,保佐人の同意を得てした場合には,取り消すことができない。
- 被補助人が,補助人の同意を得なければならない行為を,その同意又はこれに代わる家庭裁判所の許可を得ないでしたときは,その行為は取り消すことができる。
- 成年被後見人の行為であることを理由とする取消権の消滅時効の起算点は,成年被後見人が行為能力者となった時である。
選択肢
ア 誤り。「未成年者が法律行為をするには、その法定代理人の同意を得なければなら」ず(5条1項本文)、同意を得ずに行った「法律行為は、取り消すことができる(5条2項)。未成年者については成年被後見人と異なり(9条ただし書)、日常生活に関する行為について取り消すことができない旨の規定は置かれいない。
オ 誤り。「取消権は、追認するときことができる時から5年間行使しないときは、時効によって消滅する」(126条前段)。そして、「追認は、取消しの原因となっていた状況が消滅し、かつ、取消権を有することを知った後にしなければ、その効力を生じない」(124条1項)。したがって、成年被後見人の場合は①成年被後見人が行為能力者となり、②取消権を有することを有することを知った時ということになる。本肢の記述では、②の要件が不足している。
イ 正しい。成年後見人の法律行為については、未成年者、被保佐人(13条1項)及び被補助人(17条1項)と異なり、同意を要する旨の規定は存在せず、同意の有無に関係なく常に取り消すことができる。
ウ 正しい。被保佐人が、保佐人の同意を得なければならない事項として、13条1項2号は「借財又は保証をすること」を規定している。
ウ 正しい。被保佐人が、保佐人の同意を得なければならない事項として、13条1項2号は「借財又は保証をすること」を規定している。
エ 正しい。17条4項は「補助人の同意を得なければならない行為であって、その同意又はこれに代わる許可を得ないでしたものは、取り消すことができる」と規定している。
エ 正しい。17条4項は「補助人の同意を得なければならない行為であって、その同意又はこれに代わる許可を得ないでしたものは、取り消すことができる」と規定している。
オ 誤り。「取消権は、追認するときことができる時から5年間行使しないときは、時効によって消滅する」(126条前段)。そして、「追認は、取消しの原因となっていた状況が消滅し、かつ、取消権を有することを知った後にしなければ、その効力を生じない」(124条1項)。したがって、成年被後見人の場合は①成年被後見人が行為能力者となり、②取消権を有することを有することを知った時ということになる。本肢の記述では、②の要件が不足している。
解説・コメント
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問題文正答率:50.00%
第2問 Aがその財産の管理人を置かないで行方不明となったことから,家庭裁判所は,Bを不在者Aの財産の管理人として選任した。この事例に関する次のアからオまでの各記述のうち,誤っているものを組み合わせたものは,後記1から5までのうちどれか。
- Aが甲土地を所有している場合,BがAを代理して甲土地をCに売却するためには,家庭裁判所の許可を得る必要がある。
- Aが所有する現金が発見された場合,BがAを代理してその現金をD銀行のA名義普通預金口座に預け入れるためには,家庭裁判所の許可を得る必要はない。
- AがEに対して借入金債務を負っており,その債務が弁済期にある場合,BがAのためにEに対しその債務の弁済をするためには,家庭裁判所の許可を得る必要はない。
- Aが被相続人Fの共同相続人の一人である場合,BがAを代理してFの他の共同相続人との間でFの遺産について協議による遺産分割をするためには,家庭裁判所の許可を得る必要はない。
- Aに子Gがいる場合,BがAを代理してGに対し結婚資金を贈与するためには,家庭裁判所の許可を得る必要はない。
選択肢
ア 正しい。「管理人は、103条に規定する権限を超える行為を必要とするときは、家庭裁判所の許可を得て、その行為をすることができる」(28条前段)。103条に定める権限とは、「①保存行為②代理の目的である物又は権利の性質を変えない範囲内において、その利用又は改良を目的とする行為」をいう。土地の売却は処分行為であり、103条に規定する権限を越える行為となるため、家庭裁判所の許可を得る必要がある。
ウ 正しい。「管理人は、103条に規定する権限を超える行為を必要とするときは、家庭裁判所の許可を得て、その行為をすることができる」(28条前段)。103条に定める権限とは、「①保存行為②代理の目的である物又は権利の性質を変えない範囲内において、その利用又は改良を目的とする行為」をいう。このうち保存行為とは、財産の現状を維持する行為のことをいう。弁済期にある債務を弁済する行為は、全体財産の増減と言う観点から現状を維持するものとして保存行為に該当するため、家庭裁判所の許可を得る必要はない。
ア 正しい。「管理人は、103条に規定する権限を超える行為を必要とするときは、家庭裁判所の許可を得て、その行為をすることができる」(28条前段)。103条に定める権限とは、「①保存行為②代理の目的である物又は権利の性質を変えない範囲内において、その利用又は改良を目的とする行為」をいう。土地の売却は処分行為であり、103条に規定する権限を越える行為となるため、家庭裁判所の許可を得る必要がある。
エ 誤り。「管理人は、103条に規定する権限を超える行為を必要とするときは、家庭裁判所の許可を得て、その行為をすることができる」(28条前段)。103条に定める権限とは、「①保存行為②代理の目的である物又は権利の性質を変えない範囲内において、その利用又は改良を目的とする行為」をいう。遺産分割協議をすることは、103条に規定する権限を越える行為となるため、家庭裁判所の許可を得る必要がある。
イ 正しい。「管理人は、103条に規定する権限を超える行為を必要とするときは、家庭裁判所の許可を得て、その行為をすることができる」(28条前段)。103条に定める権限とは、「①保存行為②代理の目的である物又は権利の性質を変えない範囲内において、その利用又は改良を目的とする行為」をいう。このうち利用を目的とする行為とは、収益を図る行為のことをいう。現金を普通預金口座に預け入れる行為は、利用を目的とする行為に該当するため、家庭裁判所の許可を得る必要はない。
ウ 正しい。「管理人は、103条に規定する権限を超える行為を必要とするときは、家庭裁判所の許可を得て、その行為をすることができる」(28条前段)。103条に定める権限とは、「①保存行為②代理の目的である物又は権利の性質を変えない範囲内において、その利用又は改良を目的とする行為」をいう。このうち保存行為とは、財産の現状を維持する行為のことをいう。弁済期にある債務を弁済する行為は、全体財産の増減と言う観点から現状を維持するものとして保存行為に該当するため、家庭裁判所の許可を得る必要はない。
イ 正しい。「管理人は、103条に規定する権限を超える行為を必要とするときは、家庭裁判所の許可を得て、その行為をすることができる」(28条前段)。103条に定める権限とは、「①保存行為②代理の目的である物又は権利の性質を変えない範囲内において、その利用又は改良を目的とする行為」をいう。このうち利用を目的とする行為とは、収益を図る行為のことをいう。現金を普通預金口座に預け入れる行為は、利用を目的とする行為に該当するため、家庭裁判所の許可を得る必要はない。
オ 誤り。「管理人は、103条に規定する権限を超える行為を必要とするときは、家庭裁判所の許可を得て、その行為をすることができる」(28条前段)。103条に定める権限とは、「①保存行為②代理の目的である物又は権利の性質を変えない範囲内において、その利用又は改良を目的とする行為」をいう。不在者の子に金銭を贈与することは、103条に規定する権限を越える行為となるため、家庭裁判所の許可を得る必要がある。
エ 誤り。「管理人は、103条に規定する権限を超える行為を必要とするときは、家庭裁判所の許可を得て、その行為をすることができる」(28条前段)。103条に定める権限とは、「①保存行為②代理の目的である物又は権利の性質を変えない範囲内において、その利用又は改良を目的とする行為」をいう。遺産分割協議をすることは、103条に規定する権限を越える行為となるため、家庭裁判所の許可を得る必要がある。
オ 誤り。「管理人は、103条に規定する権限を超える行為を必要とするときは、家庭裁判所の許可を得て、その行為をすることができる」(28条前段)。103条に定める権限とは、「①保存行為②代理の目的である物又は権利の性質を変えない範囲内において、その利用又は改良を目的とする行為」をいう。不在者の子に金銭を贈与することは、103条に規定する権限を越える行為となるため、家庭裁判所の許可を得る必要がある。
解説・コメント
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問題文正答率:50.00%
第3問 代理に関する次のアからオまでの各記述のうち,判例の趣旨に照らし正しいものを組み合わせたものは,後記1から5までのうちどれか。
- Aの代理人Bがその代理権の範囲内でAのためにすることを示さずにCと契約を締結した場合,Cにおいて,BがAのために契約を締結することを知っていたのでなければ,AC間に契約の効力が生じることはない。
- Aは,B及びCからあらかじめ許諾を得た場合,B及びCの双方を代理してBC間の契約を締結することができる。
- 委任による代理人が本人の指名に従って復代理人を選任した場合,代理人は,選任時に復代理人が不適任であることを知っていたとしても,本人に対して復代理人の選任についての責任を負うことはない。
- 法定代理人がやむを得ない事由があるために復代理人を選任した場合,代理人は,本人に対して復代理人の選任及び監督についての責任のみを負う。
- 無権代理人は,本人の追認を得られなかったとしても,自己に代理権があると過失なく信じて行為をしたときは,相手方に対して履行又は損害賠償の責任を負わない。
選択肢
ア 誤り。代理人が本人のためにすることを示さないでした意思表示の効果は、代理人と相手方との間に生じるのが原則である(100条本文)。例外として、100条ただし書は「代理人が本人のためにすることを知り、又は知ることができたときは」、99条1項の規定すなわち代理人のなした意思表示の効力が直接本人に及ぶとする規定を準用するとしている。したがって、相手方Cにおいて代理人Bが本人のために契約をすることを知ることができた場合にもAC間に契約の効力が生じる。
イ 正しい。同一の法律行為について、当事者双方の代理人としてした行為は、代理権を有しない者がした行為とみなされるのが原則である(108条1項本文)。例外として、108条1項ただし書は「本人があらかじめ許諾した行為」については有効となるとしている。したがって、代理人であるAが本人であるB及びC双方の許諾を得ているので、B及びCの双方を代理してBC間の契約を締結することができる。
ア 誤り。代理人が本人のためにすることを示さないでした意思表示の効果は、代理人と相手方との間に生じるのが原則である(100条本文)。例外として、100条ただし書は「代理人が本人のためにすることを知り、又は知ることができたときは」、99条1項の規定すなわち代理人のなした意思表示の効力が直接本人に及ぶとする規定を準用するとしている。したがって、相手方Cにおいて代理人Bが本人のために契約をすることを知ることができた場合にもAC間に契約の効力が生じる。
オ 誤り。他人の代理人として契約をした者が、自己の代理権を証明することができず、又は本人の追認を得ることができなかったときは、相手方の選択に従って履行又は損害賠償の責任を負う(117条1項)。117条1項に規定する責任は、代理人の過失を必要としない無過失責任である。
イ 正しい。同一の法律行為について、当事者双方の代理人としてした行為は、代理権を有しない者がした行為とみなされるのが原則である(108条1項本文)。例外として、108条1項ただし書は「本人があらかじめ許諾した行為」については有効となるとしている。したがって、代理人であるAが本人であるB及びC双方の許諾を得ているので、B及びCの双方を代理してBC間の契約を締結することができる。
エ 正しい。「法定代理人は、自己の責任で復代理人を選任することができる」(105条前段)。そして、「この場合において、やむを得ない事由があるときは、本人に対してその選任及び監督についての責任のみを負う」(105条後段)。
ウ 誤り。委任による代理人は、債務の本旨に従った履行をしないときは、債権者である本人に対し債務不履行責任を負う(415条1項)。したがって、本人と代理人との間で締結された委任契約の内容により、たとえ本人の指名に従って復代理人を選任した場合であっても責任を負う場合がある。なお、改正前105条2項は、本人の指名に従って復代理人を選任したときは、原則として復代理人の選任及び監督について責任を負わない旨規定していたが、当該規定は削除された。
エ 正しい。「法定代理人は、自己の責任で復代理人を選任することができる」(105条前段)。そして、「この場合において、やむを得ない事由があるときは、本人に対してその選任及び監督についての責任のみを負う」(105条後段)。
ウ 誤り。委任による代理人は、債務の本旨に従った履行をしないときは、債権者である本人に対し債務不履行責任を負う(415条1項)。したがって、本人と代理人との間で締結された委任契約の内容により、たとえ本人の指名に従って復代理人を選任した場合であっても責任を負う場合がある。なお、改正前105条2項は、本人の指名に従って復代理人を選任したときは、原則として復代理人の選任及び監督について責任を負わない旨規定していたが、当該規定は削除された。
オ 誤り。他人の代理人として契約をした者が、自己の代理権を証明することができず、又は本人の追認を得ることができなかったときは、相手方の選択に従って履行又は損害賠償の責任を負う(117条1項)。117条1項に規定する責任は、代理人の過失を必要としない無過失責任である。
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問題文正答率:50.00%
第4問 条件に関する次のアからオまでの各記述のうち,正しいものを組み合わせたものは,後記1から5までのうちどれか。
- 停止条件付法律行為は,当事者が条件が成就した場合の効果をその成就した時以前にさかのぼらせる意思を表示したとしても,条件が成就した時からその効果が生ずる。
- 条件の成否が未定である間における当事者の権利義務は,一般の規定に従い,処分し,相続し,若しくは保存し,又はそのために担保を供することができる。
- 不能の解除条件を付した法律行為は,無効となる。
- 条件が成就することによって不利益を受ける当事者が故意にその条件の成就を妨げたときは,相手方は,その条件が成就したものとみなすことができる。
- 停止条件付法律行為は,その条件が単に債務者の意思のみに係るときは,無条件となる。
選択肢
ア 誤り。「停止条件付法律行為は、停止条件が成就した時からその効果を生ずる」(127条1項)のが原則である。しかし、例外として「当事者が条件が成就した場合の効果をその成就した時以前にさかのぼらせる意思を表示したときは、その意思に従う」(127条3項)。したがって、停止条件付法律行為において、当事者が条件が成就した場合の効果をその成就した時以前にさかのぼらせる意思を表示した場合には、その意思どおりの時から効果が生ずる。
ウ 誤り。「条件が成就しないことが法律行為の時に既に確定していた場合において、」「その条件が解除条件であるときはその法律行為は無条件とする」(131条2項)。したがって、不能の解除条件を付した法律行為は、無条件となる。
ア 誤り。「停止条件付法律行為は、停止条件が成就した時からその効果を生ずる」(127条1項)のが原則である。しかし、例外として「当事者が条件が成就した場合の効果をその成就した時以前にさかのぼらせる意思を表示したときは、その意思に従う」(127条3項)。したがって、停止条件付法律行為において、当事者が条件が成就した場合の効果をその成就した時以前にさかのぼらせる意思を表示した場合には、その意思どおりの時から効果が生ずる。
エ 正しい。「条件が成就することによって不利益を受ける当事者が故意にその条件の成就を妨げたときは、相手方は、その条件が成就したものとみなすことができる」(130条1項)。
イ 正しい。「条件の成否が未定である間における当事者の権利義務は、一般の規定に従い、処分し、相続し、若しくは保存し、又はそのために担保を供することができる」(129条)。
エ 正しい。「条件が成就することによって不利益を受ける当事者が故意にその条件の成就を妨げたときは、相手方は、その条件が成就したものとみなすことができる」(130条1項)。
イ 正しい。「条件の成否が未定である間における当事者の権利義務は、一般の規定に従い、処分し、相続し、若しくは保存し、又はそのために担保を供することができる」(129条)。
オ 誤り。「停止条件付法律行為は、その条件が単に債務者の意思のみに係るときは、無効とする」(134条)。
ウ 誤り。「条件が成就しないことが法律行為の時に既に確定していた場合において、」「その条件が解除条件であるときはその法律行為は無条件とする」(131条2項)。したがって、不能の解除条件を付した法律行為は、無条件となる。
オ 誤り。「停止条件付法律行為は、その条件が単に債務者の意思のみに係るときは、無効とする」(134条)。
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問題文正答率:50.00%
第5問 取得時効に関する次のアからオまでの各記述のうち,判例の趣旨に照らし誤っているものを組み合わせたものは,後記1から5までのうちどれか。
- 時効期間中に建物が第三者の不法行為により一部損傷した場合の損害賠償請求権は,その建物の所有権を時効により取得した者に帰属する。
- 不動産の所有権を時効により取得した者は,時効完成後にその不動産を譲り受けた者に対し,登記をしなくてもその所有権の取得を対抗することができる。
- 被相続人の占有により不動産の取得時効が完成した場合,その共同相続人の一人は,自己の相続分の限度においてのみ取得時効を援用することができる。
- 自己の所有物を占有する者は,その物について取得時効を援用することができない。
- 占有主体に変更があって承継された二個以上の占有が併せて主張される場合,占有者の善意無過失は,最初の占有者の占有開始時に判定される。
選択肢
ア 正しい。「時効の効力は、その起算日にさかのぼる」(144条)。したがって、建物の所有権を時効により取得した者は、時効の起算日より所有者であったことになるので、時効期間中に建物が第三者の不法行為により一部損傷した場合の損害賠償請求権は、その者に帰属する。
ウ 正しい。最判平成13年7月10日は、「被相続人の占有により取得時効が完成した場合において、その共同相続人の一人は、自己の相続分の限度においてのみ取得時効を援用することができる」とする。
ア 正しい。「時効の効力は、その起算日にさかのぼる」(144条)。したがって、建物の所有権を時効により取得した者は、時効の起算日より所有者であったことになるので、時効期間中に建物が第三者の不法行為により一部損傷した場合の損害賠償請求権は、その者に帰属する。
オ 正しい。最判昭和53年3月6日は、「10年の取得時効の要件としての占有者の善意・無過失の存否については占有開始の時点においてこれを判定すべきものとする民法162条2項の規定は、時効期間を通じて占有主体に変更がなく同一人により継続された占有が主張される場合について適用されるだけではなく、占有主体に変更があって承継された2個以上の占有が併せて主張される場合についてもまた適用されるものであり、後の場合にはその主張にかかる最初の占有者につき占有開始の時点においてこれを判定すれば足りる」とする。
イ 誤り。最判昭和33年8月28日は、「取得時効による不動産の所有権の取得についても、登記なくしては、時効完成後当該不動産につき旧所有者から所有権を取得し登記を経た第三者に対して、その善意たると否とを問わず、時効による所有権の取得を対抗し得ない」とする。
ウ 正しい。最判平成13年7月10日は、「被相続人の占有により取得時効が完成した場合において、その共同相続人の一人は、自己の相続分の限度においてのみ取得時効を援用することができる」とする。
イ 誤り。最判昭和33年8月28日は、「取得時効による不動産の所有権の取得についても、登記なくしては、時効完成後当該不動産につき旧所有者から所有権を取得し登記を経た第三者に対して、その善意たると否とを問わず、時効による所有権の取得を対抗し得ない」とする。
エ 誤り。最判昭和42年7月21日は、「所有権に基づいて不動産を占有する者についても、民法162条の適用がある」「民法162条が時効取得の対象物を他人の物としたのは、通常の場合において、自己の物について取得時効を援用することは無意味であるからにほかならないのであって、同条は、自己の物について取得時効の援用を許さない趣旨ではない」とする。
エ 誤り。最判昭和42年7月21日は、「所有権に基づいて不動産を占有する者についても、民法162条の適用がある」「民法162条が時効取得の対象物を他人の物としたのは、通常の場合において、自己の物について取得時効を援用することは無意味であるからにほかならないのであって、同条は、自己の物について取得時効の援用を許さない趣旨ではない」とする。
オ 正しい。最判昭和53年3月6日は、「10年の取得時効の要件としての占有者の善意・無過失の存否については占有開始の時点においてこれを判定すべきものとする民法162条2項の規定は、時効期間を通じて占有主体に変更がなく同一人により継続された占有が主張される場合について適用されるだけではなく、占有主体に変更があって承継された2個以上の占有が併せて主張される場合についてもまた適用されるものであり、後の場合にはその主張にかかる最初の占有者につき占有開始の時点においてこれを判定すれば足りる」とする。
解説・コメント
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問題文正答率:50.00%
第6問 不動産物権変動に関する次のアからオまでの各記述のうち,判例の趣旨に照らし誤っているものを組み合わせたものは,後記1から5までのうちどれか。
- AがA所有の甲建物をBに売却し,さらにBがこれをCに売却した場合,Cは,Aに対し,登記をしなくても売買による甲建物の所有権の取得を対抗することができる。
- A所有の甲土地についてBがAから遺贈を受けた場合において,Aの共同相続人の一人であるCの債権者Dが甲土地についてCが共同相続したものとしてCのその持分を差し押さえ,その旨の登記がされたときは,Bは,Dに対し,登記をしなくても遺贈による甲土地の単独所有権の取得を対抗することができる。
- 甲土地を所有するAが遺言をしないで死亡し,二人の子BCのうちBが相続放棄をしてCが唯一の相続人となった場合において,Bの債権者Dが甲土地についてBも共同相続したものとしてBのその持分を差し押さえ,その旨の登記がされたときは,Cは,Dに対し,登記をしなくても単独相続による甲土地の所有権の取得を対抗することができる。
- A所有の甲土地をAからBが買い受けた後,Bの代金未払を理由にAB間の売買契約が解除された場合において,その後にBがCに甲土地を売却しその旨の登記がされたときは,Aは,Cに対し,解除による甲土地の所有権の復帰を対抗することができない。
- Aが新築して所有する未登記の甲建物をBが不法に占有している場合,Aは,Bに対し,登記をしなければ甲建物の所有権の取得を対抗することができない。
選択肢
ア 正しい。177条に規定する「第三者」とは、当事者及びその包括承継人以外の者であって、登記の欠缺を主張する正当な利益を有する者をいう(大連判明治41年12月15日)。そして、所有権が転々と移転した場合の前主は「第三者」に該当しないと解されている。
ウ 正しい。相続人が相続放棄の申述をすると、当該「相続人は相続開始時に遡って相続開始がなかったと同じ地位におかれることとなり、この効力は絶対的で、何人に対しても、登記等なくしてその効力を生ずる」(最判昭和42年1月20日)。したがって、Cは、Dに対し、登記をしなくても単独相続による甲土地の所有権の取得を対抗することができる。
ア 正しい。177条に規定する「第三者」とは、当事者及びその包括承継人以外の者であって、登記の欠缺を主張する正当な利益を有する者をいう(大連判明治41年12月15日)。そして、所有権が転々と移転した場合の前主は「第三者」に該当しないと解されている。
エ 正しい。不動産の売買契約に基づいて買主のために所有権移転登記がなされた後に、売買契約が解除され、不動産の所有権が売主に復帰した場合、売主は所有権移転登記の抹消など自己の所有権取得の登記をしなければ、当該売買契約解除後に買主から不動産を取得した第三者に対し、所有権復帰を対抗し得ない(最判昭和35年11月29日)。したがって、Aは、Cに対し、解除による甲土地の所有権の復帰を対抗することができない。
イ 誤り。最判昭和39年3月6日は、「遺贈の場合においても不動産の二重譲渡等における場合と同様、登記をもって物件変動の対抗要件とする」とする。したがって、Bは、Dに対し、登記をしなければ遺贈による甲土地の単独所有権の取得を対抗することができない。
エ 正しい。不動産の売買契約に基づいて買主のために所有権移転登記がなされた後に、売買契約が解除され、不動産の所有権が売主に復帰した場合、売主は所有権移転登記の抹消など自己の所有権取得の登記をしなければ、当該売買契約解除後に買主から不動産を取得した第三者に対し、所有権復帰を対抗し得ない(最判昭和35年11月29日)。したがって、Aは、Cに対し、解除による甲土地の所有権の復帰を対抗することができない。
イ 誤り。最判昭和39年3月6日は、「遺贈の場合においても不動産の二重譲渡等における場合と同様、登記をもって物件変動の対抗要件とする」とする。したがって、Bは、Dに対し、登記をしなければ遺贈による甲土地の単独所有権の取得を対抗することができない。
オ 誤り。177条に規定する「第三者」とは、当事者及びその包括承継人以外の者であって、登記の欠缺を主張する正当な利益を有する者をいう(大連判明治41年12月15日)。そして、不法占有者は「第三者」に該当しない(最判昭和25年12月19日)。したがって、Aは、Bに対し、登記をしなくても甲建物の所有権の取得を対抗することができる。
ウ 正しい。相続人が相続放棄の申述をすると、当該「相続人は相続開始時に遡って相続開始がなかったと同じ地位におかれることとなり、この効力は絶対的で、何人に対しても、登記等なくしてその効力を生ずる」(最判昭和42年1月20日)。したがって、Cは、Dに対し、登記をしなくても単独相続による甲土地の所有権の取得を対抗することができる。
オ 誤り。177条に規定する「第三者」とは、当事者及びその包括承継人以外の者であって、登記の欠缺を主張する正当な利益を有する者をいう(大連判明治41年12月15日)。そして、不法占有者は「第三者」に該当しない(最判昭和25年12月19日)。したがって、Aは、Bに対し、登記をしなくても甲建物の所有権の取得を対抗することができる。
解説・コメント
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問題文正答率:50.00%
第7問 Aは,その所有する動産甲をBに保管させていた。この事例に関する次のアからオまでの各記述のうち,判例の趣旨に照らし誤っているものを組み合わせたものは,後記1から5までのうちどれか。
- Bは,甲をCに売却し,Cは,甲がBの所有物であると過失なく信じて,現実の引渡しを受けた。甲が道路運送車両法による登録を抹消された自動車であった場合,Cは,即時取得により甲の所有権を取得することができない。
- Bが死亡し,その唯一の相続人Dは,甲がBの相続財産に属すると過失なく信じて,現実に占有を開始した。甲が宝石であった場合,Dは,即時取得により甲の所有権を取得する。
- Bは,甲をEに贈与し,Eは,甲がBの所有物であると過失なく信じて,現実の引渡しを受けた。甲が宝石であった場合,Eは,即時取得により甲の所有権を取得する。
- Bの債権者により甲が強制競売に付され,Fは,甲がBの所有物であると過失なく信じて,甲を競落し,現実の引渡しを受けた。甲が宝石であった場合,Fは,即時取得により甲の所有権を取得する。
- Bは,甲をGに質入れし,Gは,甲がBの所有物であると過失なく信じて,現実の引渡しを受けた。甲が宝石であった場合,Gは,即時取得により甲を目的とする質権を取得する。
選択肢
ア 誤り。最判昭和45年12月4日は「道路運送車両法による登録を受けていない自動車は」「一般の動産として民法192条の規定の適用を受ける」「この理は、道路運送車両法により登録を受けた自動車が」「抹消登録を受けた場合においても同様である」とする。したがって、Cは、即時取得により甲の所有権を取得することができる。
イ 誤り。即時取得は、取引の安全を保護することを目的とする制度であることから、取引行為に基づいて占有を承継したことが必要と解されている。したがって、相続により甲の占有を承継したDは、即時取得によりその所有権を取得することはできない。
ア 誤り。最判昭和45年12月4日は「道路運送車両法による登録を受けていない自動車は」「一般の動産として民法192条の規定の適用を受ける」「この理は、道路運送車両法により登録を受けた自動車が」「抹消登録を受けた場合においても同様である」とする。したがって、Cは、即時取得により甲の所有権を取得することができる。
エ 正しい。最判昭和42年5月30日は「執行債務者の所有に属さない動産が強制競売に付された場合であっても、競落人は、民法192条の要件を具備するときは、同条によって右動産の所有権を取得できる」とする。したがって、Fは、即時取得により甲の所有権を取得する。
イ 誤り。即時取得は、取引の安全を保護することを目的とする制度であることから、取引行為に基づいて占有を承継したことが必要と解されている。したがって、相続により甲の占有を承継したDは、即時取得によりその所有権を取得することはできない。
オ 正しい。即時取得は、取引の安全を保護することを目的とする制度であることから、取引行為に基づいて占有を承継したことが必要と解されている。そして、質権設定は取引行為といえる。したがって、Gは、即時取得により甲を目的とする質権を取得する。
ウ 正しい。即時取得は、取引の安全を保護することを目的とする制度であることから、取引行為に基づいて占有を承継したことが必要と解されている。そして、贈与は取引行為といえる。したがってEEは、即時取得により甲の所有権を取得する。
エ 正しい。最判昭和42年5月30日は「執行債務者の所有に属さない動産が強制競売に付された場合であっても、競落人は、民法192条の要件を具備するときは、同条によって右動産の所有権を取得できる」とする。したがって、Fは、即時取得により甲の所有権を取得する。
ウ 正しい。即時取得は、取引の安全を保護することを目的とする制度であることから、取引行為に基づいて占有を承継したことが必要と解されている。そして、贈与は取引行為といえる。したがってEEは、即時取得により甲の所有権を取得する。
オ 正しい。即時取得は、取引の安全を保護することを目的とする制度であることから、取引行為に基づいて占有を承継したことが必要と解されている。そして、質権設定は取引行為といえる。したがって、Gは、即時取得により甲を目的とする質権を取得する。
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問題文正答率:50.00%
第8問 所有権に関する次のアからオまでの各記述のうち,判例の趣旨に照らし正しいものを組み合わせたものは,後記1から5までのうちどれか。
- 土地の使用収益の権原なく播種された種子が苗に生育した場合,その苗の所有権は,播種した者ではなく,その土地の所有者が取得する。
- 立木の所有権に関する明認方法は,現所有者と前所有者が共同して,現所有者名のほか,所有権の取得原因,前所有者名を表示することが必要である。
- 甲土地とその上の立木を所有するAが立木の所有権を留保して甲土地をBに譲渡した後,BがCに甲土地を立木とともに譲渡した場合,Aは,立木の所有権の留保について登記や明認方法を備えなくても,立木の所有権をCに主張することができる。
- 甲土地とその上の立木を所有するAがBに甲土地を立木とともに譲渡し,甲土地についてAからBへの所有権移転登記がされた後,CがAから立木のみを譲り受け,立木について明認方法を備えた場合,Cは立木の所有権をBに主張することができる。
- 加工者が他人の木材のみを材料としてこれに工作を加えた場合において,その工作によって生じた価格が材料の価格を著しく超えるときは,加工者がその加工物の所有権を取得する。
選択肢
ア 正しい。最判昭和31年6月19日は、播かれた種から生育した苗の所有権は、播種が土地を使用する権原のない者によってなされた場合には、土地所有者に帰属する旨判示する。
エ 誤り。立木の所有権の帰属は、明認方法と土地所有権登記との対抗関係となり、その先後により決せられる(大判大正10年4月14日)。したがって、Bへの所有権移転登記がされた後、CがAから立木のみを譲り受け、立木について明認方法を備えた場合、Cは立木の所有権をBに主張することができない。
ア 正しい。最判昭和31年6月19日は、播かれた種から生育した苗の所有権は、播種が土地を使用する権原のない者によってなされた場合には、土地所有者に帰属する旨判示する。
オ 正しい。246条1項は、「他人の動産に加工を加えた者(以下この条において「加工者」という。)があるときは、その加工物の所有権は、材料の所有者に帰属する。ただし、工作によって生じた価格が材料の価格を著しく超えるときは、加工者がその加工物の所有権を取得する」と規定する。
イ 誤り。立木の所有権に関する明認方法は、誰が現在の所有者であるかが明らかになればよく、所有権の取得原因や前所有者名を表示する必要はない(大判大正9年2月19日)。
ウ 誤り。最判昭和34年8月7日は、「登記または明認方法を施さない限り、立木所有権の留保をもってその地盤である土地の権利を取得した第三者に対抗し得ない」とする。したがって、Aは、立木の所有権の留保について登記や明認方法を備えなければ、立木の所有権をCに主張することができない。
イ 誤り。立木の所有権に関する明認方法は、誰が現在の所有者であるかが明らかになればよく、所有権の取得原因や前所有者名を表示する必要はない(大判大正9年2月19日)。
エ 誤り。立木の所有権の帰属は、明認方法と土地所有権登記との対抗関係となり、その先後により決せられる(大判大正10年4月14日)。したがって、Bへの所有権移転登記がされた後、CがAから立木のみを譲り受け、立木について明認方法を備えた場合、Cは立木の所有権をBに主張することができない。
ウ 誤り。最判昭和34年8月7日は、「登記または明認方法を施さない限り、立木所有権の留保をもってその地盤である土地の権利を取得した第三者に対抗し得ない」とする。したがって、Aは、立木の所有権の留保について登記や明認方法を備えなければ、立木の所有権をCに主張することができない。
オ 正しい。246条1項は、「他人の動産に加工を加えた者(以下この条において「加工者」という。)があるときは、その加工物の所有権は、材料の所有者に帰属する。ただし、工作によって生じた価格が材料の価格を著しく超えるときは、加工者がその加工物の所有権を取得する」と規定する。
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第9問 相隣関係に関する次のアからオまでの各記述のうち,誤っているものを組み合わせたものは,後記1から5までのうちどれか。
- AとBが共有する土地の分割によって公道に通じないA所有の甲土地と公道に通じるB所有の乙土地が生じた場合において,甲土地から公道に至るためにはC所有の丙土地を通行するのが最も損害が少ないときは,Aは,丙土地を通行することができる。
- 土地の所有者は,隣地の所有者が隣地に設置した排水溝の破壊又は閉塞により自己の土地に損害が及んでいる場合,隣地の所有者に,排水溝の修繕又は障害の除去をさせることができる。
- 土地の所有者は,隣地の竹木の枝が境界線を越えているときは,自らその枝を切除することができる。
- 境界線上に設けられた境界標は,相隣者の共有に属するものと推定される。
- 土地の所有者は,隣地の所有者と共同の費用で,境界標を設けることができる。
選択肢
ア 誤り。「分割によって公道に通じない土地が生じたときは、その土地の所有者は、公道に至るため、他の分割者の所有地のみを通行することができる」(213条前段)。したがって、Aは、他の分割者であるBの所有地乙のみを通行することができる。
ウ 誤り。「隣地の竹木の枝が境界線を越えるときは、その竹木の所有者に、その枝を切除させることができる」(233条1項)。したがって、土地の所有者は、隣地の竹木の枝が境界線を越えているときでも、自らその枝を切除することはできない。
ア 誤り。「分割によって公道に通じない土地が生じたときは、その土地の所有者は、公道に至るため、他の分割者の所有地のみを通行することができる」(213条前段)。したがって、Aは、他の分割者であるBの所有地乙のみを通行することができる。
オ 正しい。「土地の所有者は、隣地の所有者と共同の費用で、境界標を設けることができる」(223条)。
イ 「他の土地に貯水、排水又は引水のために設けられた工作物の破壊又は閉塞により、自己の土地に損害が及び、又は及ぶおそれがある場合には、その土地の所有者は、当該他の土地の所有者に、工作物の修繕
若しくは障害の除去をさせ、又は必要があるときは予防工事をさせることができる」(216条)。したがって、土地の所有者は、設問の場合、隣地の所有者に、排水溝の修繕又は除去をさせることができる。
エ 「境界線上に設けた境界標、囲障、障壁、溝及び堀は、相隣者の共有に属するものと推定する」(229条)。
イ 正しい。「他の土地に貯水、排水又は引水のために設けられた工作物の破壊又は閉塞により、自己の土地に損害が及び、又は及ぶおそれがある場合には、その土地の所有者は、当該他の土地の所有者に、工作物の修繕若しくは障害の除去をさせ、又は必要があるときは予防工事をさせることができる」(216条)。したがって、土地の所有者は、設問の場合、隣地の所有者に、排水溝の修繕又は除去をさせることができる。
オ 正しい。「土地の所有者は、隣地の所有者と共同の費用で、境界標を設けることができる」(223条)。
ウ 誤り。「隣地の竹木の枝が境界線を越えるときは、その竹木の所有者に、その枝を切除させることができる」(233条1項)。したがって、土地の所有者は、隣地の竹木の枝が境界線を越えているときでも、自らその枝を切除することはできない。
エ 正しい。「境界線上に設けた境界標、囲障、障壁、溝及び堀は、相隣者の共有に属するものと推定する」(229条)。
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第10問 A,B及びCが各3分の1の割合で甲建物を共有している場合に関する次のアからオまでの各記述のうち,判例の趣旨に照らし正しいものを組み合わせたものは,後記1から5までのうちどれか。
- Aは,その持分に抵当権を設定する場合,B及びCの同意を得る必要がある。
- DがA,B及びCに無断でD名義の所有権移転登記をした場合,Aは,B及びCの同意を得ることなく単独で,Dに対してその所有権移転登記の抹消登記手続を請求することができる。
- Aは,その持分を放棄する場合,B又はCの同意を得る必要がある。
- AがB及びCに無断で甲建物をEに引き渡し,無償で使用させている場合,Bは,Cの同意を得ることなく単独で,Eに対して甲建物の明渡しを請求することができる。
- AがBに対して甲建物の管理に関する債権を有する場合において,Bがその持分をFに譲渡したときは,Aは,Fに対してもその債権を行使することができる。
選択肢
ア 誤り。「各共有者は、共有物の全部について、その持分に応じた使用をすることができる」(249条)。持分権の処分は、各共有者が自由に行うことができる。したがって、Aは、その持分に抵当権を設定する場合、B及びCの同意を得る必要はない。
イ 正しい。最判昭和31年5月10日は、「不動産の共有者の一人がその持分に基ずき当該不動産につき登記簿上所有名義者たるものに対してその登記の抹消を求めることは、妨害排除の請求に外ならずいわゆる保存行為に属するものというべく、従って、共同相続人の一人が単独で本件不動産に対する所有権移転登記の全部の抹消を求めうる」とする。したがって、設問の場合、Aは、B及びCの同意を得ることなく単独で、Dに対してその所有権移転登記の抹消登記手続を請求することができる。
ア 誤り。「各共有者は、共有物の全部について、その持分に応じた使用をすることができる」(249条)。持分権の処分は、各共有者が自由に行うことができる。したがって、Aは、その持分に抵当権を設定する場合、B及びCの同意を得る必要はない。
エ 誤り。最判昭和63年5月20日は、「共有者の一部の者から共有者の協議に基づかないで共有物を占有使用することを承認された第三者は、」「現に有する占有がこれを承認した共有者の持分に基づくものと認められる限度で共有物を占有使用する権原を有するので、第三者の占有使用を承認しなかった共有者は右第三者に対して当然には共有物の明渡しを請求することはできない」とする。したがって、設問の場合、Bは、Cの同意を得ることなく単独で、Eに対して甲建物の明渡しを請求することができるとはいえない。
イ 正しい。最判昭和31年5月10日は、「不動産の共有者の一人がその持分に基ずき当該不動産につき登記簿上所有名義者たるものに対してその登記の抹消を求めることは、妨害排除の請求に外ならずいわゆる保存行為に属するものというべく、従って、共同相続人の一人が単独で本件不動産に対する所有権移転登記の全部の抹消を求めうる」とする。したがって、設問の場合、Aは、B及びCの同意を得ることなく単独で、Dに対してその所有権移転登記の抹消登記手続を請求することができる。
オ 正しい。「共有者の1人が共有物について他の共有者に対して有する債権は、その特定承継人に対しても行使することができる」(254条)。そして、「他の共有者に対して有する債権」には、不動産の管理費用も含まれる。したがって、設問の場合、Bがその持分をFに譲渡したときは、Aは、Fに対してもその債権を行使することができる。
ウ 誤り。「共有者の1人が、その持分を放棄したとき、又は死亡して相続人がないときは、その持分は、他の共有者に帰属する」(255条)。共有者が持分を放棄するにあたり、他の共有者の同意を求める規定はなく自由にこれを行うことができる。したがって、Aは、その持分を放棄する場合、B又はCの同意を得る必要はない。
エ 誤り。最判昭和63年5月20日は、「共有者の一部の者から共有者の協議に基づかないで共有物を占有使用することを承認された第三者は、」「現に有する占有がこれを承認した共有者の持分に基づくものと認められる限度で共有物を占有使用する権原を有するので、第三者の占有使用を承認しなかった共有者は右第三者に対して当然には共有物の明渡しを請求することはできない」とする。したがって、設問の場合、Bは、Cの同意を得ることなく単独で、Eに対して甲建物の明渡しを請求することができるとはいえない。
ウ 誤り。「共有者の1人が、その持分を放棄したとき、又は死亡して相続人がないときは、その持分は、他の共有者に帰属する」(255条)。共有者が持分を放棄するにあたり、他の共有者の同意を求める規定はなく自由にこれを行うことができる。したがって、Aは、その持分を放棄する場合、B又はCの同意を得る必要はない。
オ 正しい。「共有者の1人が共有物について他の共有者に対して有する債権は、その特定承継人に対しても行使することができる」(254条)。そして、「他の共有者に対して有する債権」には、不動産の管理費用も含まれる。したがって、設問の場合、Bがその持分をFに譲渡したときは、Aは、Fに対してもその債権を行使することができる。
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問題文正答率:50.00%
第11問 不動産を目的とする担保物権に関する次のアからオまでの各記述のうち,判例の趣旨に照らし誤っているものを組み合わせたものは,後記1から5までのうちどれか。
- 留置権者は,債務者の承諾を得なくても,目的不動産を賃貸することができる。
- 不動産の保存の先取特権の効力を保存するためには,保存行為が完了した後直ちに登記をしなければならない。
- 不動産質権の設定後に質権者が質権設定者に目的不動産を占有させたとしても,質権の効力は影響を受けない。
- 不動産質権者は,設定行為に定めがあるときは,その債権の利息を請求することができる。
- 抵当権の存続期間は,10年を超えることができない。
選択肢
ア 誤り。「留置権者は、債務者の承諾を得なければ、留置物を使用し、賃貸し、又は担保に供することができない。ただし、その物の保存に必要な使用をすることは、この限りでない」(298条)。
イ 正しい。「不動産の保存の先取特権の効力を保存するためには、保存行為が完了した後直ちに登記をしなければならない」(337条)。
ア 誤り。「留置権者は、債務者の承諾を得なければ、留置物を使用し、賃貸し、又は担保に供することができない。ただし、その物の保存に必要な使用をすることは、この限りでない」(298条)。
オ 誤り。抵当権には、質権と異なり(360条1項)、存続期間を制限する規定は置かれていない。
イ 正しい。「不動産の保存の先取特権の効力を保存するためには、保存行為が完了した後直ちに登記をしなければならない」(337条)。
ウ 正しい。大判大正5年12月25日は、質権者が一旦質物の引渡しを受け有効に質権を取得した後に、質物を設定者に返還しても、不動産質については何らの影響も受けない旨判示している。
ウ 正しい。大判大正5年12月25日は、質権者が一旦質物の引渡しを受け有効に質権を取得した後に、質物を設定者に返還しても、不動産質については何らの影響も受けない旨判示している。
エ 正しい。「不動産質権者は、その債権の利息を請求することができない」(358条)のが原則である。しかし、例外として「前3条の規定は、設定行為に別段の定めがあるとき」は、「適用されない」(359条)。
エ 正しい。「不動産質権者は、その債権の利息を請求することができない」(358条)のが原則である。しかし、例外として「前3条の規定は、設定行為に別段の定めがあるとき」は、「適用されない」(359条)。
オ 誤り。抵当権には、質権と異なり(360条1項)、存続期間を制限する規定は置かれていない。
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問題文正答率:50.00%
第12問 留置権に関する次のアからオまでの各記述のうち,判例の趣旨に照らし正しいものを組み合わせたものは,後記1から5までのうちどれか。
- 留置権者が目的物を紛失したときは,留置権は消滅する。
- 他人の物の占有者は,その物に関して生じた債権が弁済期にないときであっても,その物を留置することができる。
- 債務者は,相当の担保を供して,留置権の消滅を請求することができる。
- 留置権者は,留置権に基づき,目的物の競売を申し立てることはできない。
- Aがその所有する甲建物をBに売却して引き渡した後,Aが甲建物をCに売却してその旨の登記をした場合において,CがBに対して甲建物の明渡請求をしたときは,Bは,Aの債務不履行に基づく損害賠償請求権を被担保債権として,甲建物を留置することができる。
選択肢
ア 正しい。「留置権は、留置権者が留置物の占有を失うことによって、消滅する」(302条本文)。
ウ 正しい。「債務者は、相当の担保を供して、留置権の消滅を請求することができる」(301条)。
ア 正しい。「留置権は、留置権者が留置物の占有を失うことによって、消滅する」(302条本文)。
エ 誤り。「留置権による競売及び民法、商法その他の法律の規定による換価のための競売については、担保権の実行としての競売の例による」(民事執行法195条)。この規定は、留置権に基づく競売の申し立てが認められることを前提としている。
イ 誤り。「他人の物の占有者は、その物に関して生じた債権を有するときは、その債権の弁済を受けるまで、その物を留置することができる。ただし、その債権が弁済期にないときは、この限りでない」(295条1項)。
エ 誤り。「留置権による競売及び民法、商法その他の法律の規定による換価のための競売については、担保権の実行としての競売の例による」(民事執行法195条)。この規定は、留置権に基づく競売の申し立てが認められることを前提としている。
イ 誤り。「他人の物の占有者は、その物に関して生じた債権を有するときは、その債権の弁済を受けるまで、その物を留置することができる。ただし、その債権が弁済期にないときは、この限りでない」(295条1項)。
オ 誤り。最判昭和43年11月21日は、設問と同様の二重売買がなされたケースで、第一の買主の留置権の主張を否定している。理由として、第一の買主である「上告人ら主張の債権はいずれもその物自体を目的とする債権がその態様を変じたものであり、このような債権はその物に関して生じた債権とはいえない」としている。
ウ 正しい。「債務者は、相当の担保を供して、留置権の消滅を請求することができる」(301条)。
オ 誤り。最判昭和43年11月21日は、設問と同様の二重売買がなされたケースで、第一の買主の留置権の主張を否定している。理由として、第一の買主である「上告人ら主張の債権はいずれもその物自体を目的とする債権がその態様を変じたものであり、このような債権はその物に関して生じた債権とはいえない」としている。
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問題文正答率:50.00%
第13問 質権に関する次のアからオまでの各記述のうち,判例の趣旨に照らし正しいものを組み合わせたものは,後記1から5までのうちどれか。
- 債権質の質権者は,質権の目的が金銭債権でない場合,これを直接に取り立てることはできない。
- 動産質権者は,質物から生ずる果実を収取し,他の債権者に優先して被担保債権の弁済に充当することができる。
- 質権者は,質権設定者の承諾を得なければ,自己の債務の担保として質物をさらに質入れすることはできない。
- 質権は,設定行為に定めがないときは,質物の隠れた瑕疵によって生じた損害の賠償を担保しない。
- Aは,Bに対して有する債権を担保するために,BがAに対して有する債権を目的として質権の設定を受けることができる。
選択肢
ア 誤り。「質権者は、質権の目的である債権を直接に取り立てることができる」(366条1項)。質権の目的を金銭債権に制限する規定は置かれていない。
ウ 誤り。「質権者は、その権利の存続期間内において、自己の責任で、質物について、転質をすることができる(348条前段)。設定者の承諾を得ず、質権者の責任において質入れを行う責任転質が認められている。
ア 誤り。「質権者は、質権の目的である債権を直接に取り立てることができる」(366条1項)。質権の目的を金銭債権に制限する規定は置かれていない。
エ 誤り。「質権は、元本、利息、違約金、質権の実行の費用、質物の保存の費用及び債務の不履行又は質物の隠れた瑕疵によって生じた損害の賠償を担保する」(346条本文)。
イ 正しい。「第296条から第300条まで及び第304条の規定は、質権について準用する」(350条)。「留置権者は、留置物から生ずる果実を収取し、他の債権者に先立って、これを自己の債権の弁済に充当することができる」(297条1項)。
ウ 誤り。「質権者は、その権利の存続期間内において、自己の責任で、質物について、転質をすることができる(348条前段)。設定者の承諾を得ず、質権者の責任において質入れを行う責任転質が認められている。
イ 正しい。「第296条から第300条まで及び第304条の規定は、質権について準用する」(350
条)。「留置権者は、留置物から生ずる果実を収取し、他の債権者に先立って、これを自己の債権の弁済に充当することができる」(297条1項)。
オ 正しい。質権者が債務者となる債権についても質権の目的となると解されている。したがって、BがAに対して有する債権を目的として質権の設定を受けることができる。
エ 誤り。「質権は、元本、利息、違約金、質権の実行の費用、質物の保存の費用及び債務の不履行又は質物の隠れた瑕疵によって生じた損害の賠償を担保する」(346条本文)。
オ 正しい。質権者が債務者となる債権についても質権の目的となると解されている。したがって、BがAに対して有する債権を目的として質権の設定を受けることができる。
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問題文正答率:50.00%
第14問 抵当権に関する次のアからオまでの各記述のうち,判例の趣旨に照らし誤っているものを組み合わせたものは,後記1から5までのうちどれか。
- 抵当権者は,目的物が第三者の行為により滅失した場合,物上代位により,所有者がその第三者に対して有する損害賠償請求権から優先弁済を受けることができる。
- 一人の者が所有する互いに主従の関係にない甲乙2棟の建物が工事により1棟の丙建物となった場合において,甲建物と乙建物とにそれぞれ抵当権が設定されていたときは,それらの抵当権は,丙建物のうちの甲建物と乙建物の価格の割合に応じた持分を目的とするものとして存続する。
- 借地上の建物について抵当権が設定された場合,抵当権の効力は,敷地の賃借権に及ぶことはない。
- 物の引渡請求権を担保するために抵当権を設定する契約は,無効である。
- 後日発生すべき貸付金債権を担保するために抵当権を設定する契約がされ,その旨の登記がされた後にその貸付金債権が生じた場合,抵当権はその債権を有効に担保する。
選択肢
ア 正しい。「第296条、第304条及び第351条の規定は、抵当権について準用する」(372条)。「先取特権は、その目的物の売却、賃貸、滅失又は損傷によって債務者が受けるべき金銭その他の物に対しても、行使することができる」(304条1項本文)。そして、目的物の滅失によって債務者が受けるべき金銭には、第三者が抵当権の目的物を滅失した場合に設定者が当該第三者に対し有する損害賠償請求権も含まれる。したがって、抵当権者は、設問の場合、物上代位により、所有者がその第三者に対して有する損害賠償請求権から優先弁済を受けることができる。
ウ 誤り。最判昭和40年5月4日は、「建物を所有するために必要な敷地の賃借権は、右建物所有権に付随し、これと一体となって一の財産的価値を形成しているものであるから、建物に抵当権が設定されたときは敷地の賃借権も原則としてその効力の及ぶ目的物に包含される」とする。したがって、設問の場合、抵当権の効力は、敷地の賃借権に及ぶ。
ア 正しい。「第296条、第304条及び第351条の規定は、抵当権について準用する」(372条)。「先取特権は、その目的物の売却、賃貸、滅失又は損傷によって債務者が受けるべき金銭その他の物に対しても、行使することができる」(304条1項本文)。そして、目的物の滅失によって債務者が受けるべき金銭には、第三者が抵当権の目的物を滅失した場合に設定者が当該第三者に対し有する損害賠償請求権も含まれる。したがって、抵当権者は、設問の場合、物上代位により、所有者がその第三者に対して有する損害賠償請求権から優先弁済を受けることができる。
オ 正しい。最判昭和33年5月9日は、「将来発生の可能性のある条件付債権を担保するため抵当権を設定することも、有効」とする。したがって、設問の場合、抵当権はその債権を有効に担保する。
イ 正しい。最判平成6年1月25日は、「互いに主従の関係にない甲、乙2棟の建物が、その間の隔壁を除去する等の工事により1棟の丙建物となった場合においても、これをもって、甲建物あるいは乙建物を目的として設定されていた抵当権が消滅することはなく、右抵当権は、丙建物のうちの甲建物又は乙建物の価格の割合に応じた持分を目的とするものとして存続する」とする。したがって、設問の場合、抵当権は、丙建物のうちの甲建物と乙建物の価格の割合に応じた持ち分を目的とするものとして存続する。
エ 誤り。抵当権の被担保債権は、通常は金債債権であるが、物の引渡請求権のような金銭債権以外あてっも、債務不履行があれば損害賠償請求権という形の金銭債権となるので、抵当権の被担保債権となり得る。したがって、物の引渡請求権を担保するために抵当権を設定する契約は、有効である。
イ 正しい。最判平成6年1月25日は、「互いに主従の関係にない甲、乙2棟の建物が、その間の隔壁を除去する等の工事により1棟の丙建物となった場合においても、これをもって、甲建物あるいは乙建物を目的として設定されていた抵当権が消滅することはなく、右抵当権は、丙建物のうちの甲建物又は乙建物の価格の割合に応じた持分を目的とするものとして存続する」とする。したがって、設問の場合、抵当権は、丙建物のうちの甲建物と乙建物の価格の割合に応じた持ち分を目的とするものとして存続する。
オ 正しい。最判昭和33年5月9日は、「将来発生の可能性のある条件付債権を担保するため抵当権を設定することも、有効」とする。したがって、設問の場合、抵当権はその債権を有効に担保する。
ウ 誤り。最判昭和40年5月4日は、「建物を所有するために必要な敷地の賃借権は、右建物所有権に付随し、これと一体となって一の財産的価値を形成しているものであるから、建物に抵当権が設定されたときは敷地の賃借権も原則としてその効力の及ぶ目的物に包含される」とする。したがって、設問の場合、抵当権の効力は、敷地の賃借権に及ぶ。
エ 誤り。抵当権の被担保債権は、通常は金債債権であるが、物の引渡請求権のような金銭債権以外あてっも、債務不履行があれば損害賠償請求権という形の金銭債権となるので、抵当権の被担保債権となり得る。したがって、物の引渡請求権を担保するために抵当権を設定する契約は、有効である。
解説・コメント
https://ja.mondder.com/sq?id=4207🔗
問題文正答率:50.00%
第15問 抵当権の効力が及ぶ範囲に関する次のアからオまでの各記述のうち,判例の趣旨に照らし正しいものを組み合わせたものは,後記1から5までのうちどれか。
- 抵当権設定者が,抵当権の目的である土地を第三者に賃貸していた場合,その担保する債権について不履行がなくても,抵当権の効力は,その賃料債権に及ぶ。
- 土地の所有者が,土地に抵当権を設定した後,その土地上に立木を植栽した場合,抵当権の効力は,その立木に及ぶ。
- 抵当権設定者が,抵当権の目的である建物に宝石を持ち込んで保管していた場合,抵当権の効力は,その宝石に及ぶ。
- 抵当権の目的である建物が天災のため崩壊し動産となった場合,抵当権の効力は,その動産に及ぶ。
- 抵当権設定者から抵当権の目的である建物を賃借した賃借人が,その所有する取り外し可能なエアコンを建物内に設置している場合,抵当権の効力は,そのエアコンに及ばない。
選択肢
ア 誤り。「抵当権は、その担保する債権について不履行があったときは、その後に生じた抵当権の果実に及ぶ」(371条)。したがって、設問の場合、その担保する債権について不履行がなければ、抵当権の効力は、その賃料債権に及ばない。
ウ 誤り。「抵当権は、抵当地の上に存する建物を除き、その目的である不動産(以下「抵当不動産」という。)に付加して一体となっている物に及ぶ」(370条本文)。そして、付加一体物とは、抵当権が目的物の交換価値を把握するものであることから、目的となる不動産と経済的に一体といえるものをいう。建物に持ち込まれた宝石は、建物と経済的に一体とはいえない。したがって、設問の場合、抵当権はその宝石に及ばない。
ア 誤り。「抵当権は、その担保する債権について不履行があったときは、その後に生じた抵当権の果実に及ぶ」(371条)。したがって、設問の場合、その担保する債権について不履行がなければ、抵当権の効力は、その賃料債権に及ばない。
エ 誤り。大判大正5年6月28日は、抵当権の目的である家屋が天災のため崩壊し、動産となった場合、当該動産に抵当権の効力は及ばない旨判示している。
イ 正しい。「抵当権は、抵当地の上に存する建物を除き、その目的である不動産(以下「抵当不動産」と
いう。)に付加して一体となっている物に及ぶ」(370条本文)。そして、抵当権の目的である不動産に付合(240条)した物は、その構成部分となるので、付合の時期を問わず「付加して一体となっている物」に含まれると解されている。したがって、設問の場合、抵当権の効力は、その流木に及ぶ。なお、大判大正14年10月26日も、土地に設定した抵当権の効力が、立木法の適用のない地上の樹木に及ぶ旨判示している。
ウ 誤り。「抵当権は、抵当地の上に存する建物を除き、その目的である不動産(以下「抵当不動産」という。)に付加して一体となっている物に及ぶ」(370条本文)。そして、付加一体物とは、抵当権が目的物の交換価値を把握するものであることから、目的となる不動産と経済的に一体といえるものをいう。建物に持ち込まれた宝石は、建物と経済的に一体とはいえない。したがって、設問の場合、抵当権はその宝石に及ぶ。
イ 正しい。「抵当権は、抵当地の上に存する建物を除き、その目的である不動産(以下「抵当不動産」という。)に付加して一体となっている物に及ぶ」(370条本文)。そして、抵当権の目的である不動産に付合(240条)した物は、その構成部分となるので、付合の時期を問わず「付加して一体となっている物」に含まれると解されている。したがって、設問の場合、抵当権の効力は、その立木に及ぶ。なお、大判大正14年10月26日も、土地に設定した抵当権の効力が、立木法の適用のない地上の樹木に及ぶ旨判示している。
オ 正しい。「不動産の所有者は、その不動産に従として付合した物の所有権を取得する。ただし、権原によってその物を附属させた他人の権利を妨げない」(240条)。付合物は、370条本文に規定する「付加して一体となっている物」に含まれるが、240条ただし書により、他人が権原により附属させた物に対しては抵当権の効力は及ばない。そして、「権原」には、賃借権も含まれる。したがって、設問の場合、抵当権の効力は、そのエアコンに及ばない。
エ 誤り。大判大正5年6月28日は、抵当権の目的である家屋が天災のため崩壊し、動産となった場合、当該動産に抵当権の効力は及ばない旨判示している。
オ 正しい。「不動産の所有者は、その不動産に従として付合した物の所有権を取得する。ただし、権原によってその物を附属させた他人の権利を妨げない」(240条)。付合物は、370条本文に規定する「付加して一体となっている物」に含まれるが、240条ただし書により、他人が権原により附属させた物に対しては抵当権の効力は及ばない。そして、「権原」には、賃借権も含まれる。したがって、設問の場合、抵当権の効力は、そのエアコンに及ばない。
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問題文正答率:50.00%
第16問 債務者が設定した譲渡担保に関する次のアからオまでの各記述のうち,判例の趣旨に照らし誤っているものを組み合わせたものは,後記1から5までのうちどれか。
- 債務者が弁済期に債務の弁済をしなかった場合において,不動産の譲渡担保権者が目的不動産を譲渡したときは,譲受人がいわゆる背信的悪意者に当たるときであっても,債務者は,残債務を弁済して目的不動産を受け戻すことができない。
- 債務者は,被担保債権の弁済期後は,譲渡担保の目的物の受戻権を放棄することにより,譲渡担保権者に対し清算金の支払を請求することができる。
- 債務者が弁済期に債務の弁済をしなかった場合において,不動産の譲渡担保権者が目的不動産を譲渡したときは,債務者は,譲受人からの明渡請求に対し,譲渡担保権者に対する清算金支払請求権を被担保債権とする留置権を主張することができない。
- 譲渡担保の被担保債権の弁済期後に目的不動産が譲渡担保権者の債権者によって差し押さえられ,その旨の登記がされた場合,債務者は,その後に被担保債権に係る債務の全額を弁済しても,差押債権者に対し,目的不動産の所有権を主張することができない。
- 構成部分の変動する集合動産であっても,その種類,所在場所及び量的範囲を指定するなどの方法によって目的物の範囲が特定される場合には,一個の集合物として譲渡担保の目的とすることができる。
選択肢
ア 正しい。最判平成6年2月22日は、不動産を目的とする譲渡担保契約において、債務者が弁済期に債務を弁済しない場合、債権者は目的物を処分する権能を取得するから、債権者がこの権能に基づいて目的物を第三者に譲渡したときは、原則として、譲受人は目的物の所有権を確定的に取得し、債務者は清算金がある場合に債権者に対してその支払いを求めることができるにとどまり、残債務を弁済して目的物を受け戻すことはできなくなる。そして、これは譲渡を受けた第三者がいわゆる背信的悪意者に当たる場合であっても同様である旨判示する。したがって、設問の場合、債務者は、残債務を弁済して目的不動産を受け戻すことができない。
ウ 誤り。最判平成9年4月11日は、譲渡担保権設定者は、譲渡担保権の実行として目的不動産の譲渡を受けた第三者からの明渡請求に対して、譲渡担保権者に対する清算金支払請求権を被担保債権とする留置権を主張することができる旨判示する。したがって、設問の場合、債務者は、譲渡担保権者に対する清算金支払請求権を被担保債権とする留置権を主張することができる。
ア 正しい。最判平成6年2月22日は、不動産を目的とする譲渡担保契約において、債務者が弁済期に債務を弁済しない場合、債権者は目的物を処分する権能を取得するから、債権者がこの権能に基づいて目的物を第三者に譲渡したときは、原則として、譲受人は目的物の所有権を確定的に取得し、債務者は清算金がある場合に債権者に対してその支払いを求めることができるにとどまり、残債務を弁済して目的物を受け戻すことはできなくなる。そして、これは譲渡を受けた第三者がいわゆる背信的悪意者に当たる場合であっても同様である旨判示する。したがって、設問の場合、債務者は、残債務を弁済して目的不動産を受け戻すことができない。
エ 正しい。最判平成18年10月20日は、不動産を目的とする譲渡担保において、被担保債権の弁済期後に譲渡担保権者の債権者が目的不動産を差し押さえ、その旨登記の登記がされたときは、設定者は当該登記後に債務の全額を弁済しても、強制執行の不許を求めることはできない旨判示する。したがって、設問の場合、債務者は、差押債権者に対し、目的不動産の所有権を主張することはできない。
イ 誤り。平成8年11月22日は、譲渡担保権設定者は、譲渡担保権者が清算金の支払または提供をせず、清算金がない旨の通知もしない間に、譲渡担保の目的物の受戻権を放棄しても、譲渡担保権者に対し清算金の請求をすることはできない旨判示する。したがって、設問の場合、債務者は、譲渡担保権者に対し清算金の支払を請求することはできない。
ウ 誤り。最判平成9年4月11日は、譲渡担保権設定者は、譲渡担保権の実行として目的不動産の譲渡を受けた第三者からの明渡請求に対して、譲渡担保権者に対する清算金支払請求権を被担保債権とする留置権を主張することができる旨判示する。したがって、設問の場合、債務者は、譲渡担保権者に対する清算金支払請求権を被担保債権とする留置権を主張することができる。
イ 誤り。平成8年11月22日は、譲渡担保権設定者は、譲渡担保権者が清算金の支払または提供をせず、清算金がない旨の通知もしない間に、譲渡担保の目的物の受戻権を放棄しても、譲渡担保権者に対し清算金の請求をすることはできない旨判示する。したがって、設問の場合、債務者は、譲渡担保権者に対し清算金の支払を請求することはできない。
オ 正しい。最判昭和54年2月15日は、構成部分の変動する集合動産についても、その種類、所在場所及び量的範囲を指定するなど何らかの方法で目的物の範囲が特定される場合には、一個の集合物として譲渡担保の目的となり得る旨判示する。したがって、設問の場合、一個の集合物として譲渡担保の目的とすることができる。
エ 正しい。最判平成18年10月20日は、不動産を目的とする譲渡担保において、被担保債権の弁済期後に譲渡担保権者の債権者が目的不動産を差し押さえ、その旨登記の登記がされたときは、設定者は当該登記後に債務の全額を弁済しても、強制執行の不許を求めることはできない旨判示する。したがって、設問の場合、債務者は、差押債権者に対し、目的不動産の所有権を主張することはできない。
オ 正しい。最判昭和54年2月15日は、構成部分の変動する集合動産についても、その種類、所在場所及び量的範囲を指定するなど何らかの方法で目的物の範囲が特定される場合には、一個の集合物として譲渡担保の目的となり得る旨判示する。したがって、設問の場合、一個の集合物として譲渡担保の目的とすることができる。
解説・コメント
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問題文正答率:50.00%
第17問 保証に関する次のアからオまでの各記述のうち,判例の趣旨に照らし正しいものを組み合わせたものは,後記1から5までのうちどれか。
- 保証契約は,書面又はその内容を記録した電磁的記録によってされなければ,その効力を生じない。
- 保証人は,債権者が保証人を指名した場合でも,行為能力者であることを要する。
- 貸金等根保証契約は,主たる債務の元本の確定すべき期日の定めがない場合,その効力を生じない。
- 主たる債務につき期限が延長されても,その効力は保証債務には及ばない。
- 保証人が催告の抗弁権を行使したにもかかわらず,債権者が催告を怠ったために主たる債務者から全部の弁済を得られなかったときは,保証人は,債権者が直ちに催告をすれば弁済を得ることができた限度において,その義務を免れる。
選択肢
ア 正しい。「保証契約は、書面でしなければ、その効力を生じない」(446条2項)。「保証契約がその内容を記録した電磁的記録によってされたときは、その保証契約は、書面によってされたものとみなして、前項の規定を適用する」(同条3項)。したがって、保証契約は、書面又はその内容を記録した電磁的記録によってされなければ、その効力を生じない。
ウ 誤り。「個人貸金等根保証契約において元本確定期日の定めがない場合(前項の規定により元本確定期日の定めがその効力を生じない場合を含む。)には、その元本確定期日は、その個人貸金等根保証契約の締結の日から3年を経過する日とする」(465条の3第2項)。したがって、個人貸金等根保証契約は、主たる債務の元本の確定すべき期日の定めがなくても、その効力を生じる。
ア 正しい。「保証契約は、書面でしなければ、その効力を生じない」(446条2項)。「保証契約がその内容を記録した電磁的記録によってされたときは、その保証契約は、書面によってされたものとみなして、前項の規定を適用する」(同条3項)。したがって、保証契約は、書面又はその内容を記録した電磁的記録によってされなければ、その効力を生じない。
オ 正しい。「第452条又は第453条の規定により保証人の請求又は証明があったにもかかわらず、債権者が催告又は執行をすることを怠ったために主たる債務者から全部の弁済を得られなかったときは、保証人は、債権者が直ちに催告又は執行すれば弁済を得ることができた限度において、その義務を免れる」(455条)。「債権者が保証人に債務の履行を請求したときは、保証人は、まず主たる債務者に催告をすべき旨を請求することができる。」(452条本文)。したがって、設問の場合、保証人は、債権者が直ちに催告をすれば弁済を得ることができた限度において、その義務を免れる。
イ 誤り。「債務者が保証人を立てる義務を負う場合には、その保証人は、次に掲げる要件を具備する者でなければならない。一行為能力者であること。二弁済をする資力を有すること」(450条1項)。「前2項の規定は、債権者が保証人を指名した場合には、適用しない」(同条3項)。したがって、保証人は、債権者が保証人を指名した場合には、行為能力者であることを要しない。
エ 誤り。大判明治40年6月18日は、主たる債務の弁済期限が延長された場合、その効力は保証債務に及ぶ旨判示している。したがって、主たる債務につき期限が延長されると、その効力は保証債務に及ぶ。
イ 誤り。「債務者が保証人を立てる義務を負う場合には、その保証人は、次に掲げる要件を具備する者でなければならない。一行為能力者であること。二弁済をする資力を有すること」(450条1項)。「前2項の規定は、債権者が保証人を指名した場合には、適用しない」(同条3項)。したがって、保証人は、債権者が保証人を指名した場合には、行為能力者であることを要しない。
オ 正しい。「第452条又は第453条の規定により保証人の請求又は証明があったにもかかわらず、債権者が催告又は執行をすることを怠ったために主たる債務者から全部の弁済を得られなかったときは、保証人は、債権者が直ちに催告又は執行すれば弁済を得ることができた限度において、その義務を免れる」(455条)。「債権者が保証人に債務の履行を請求したときは、保証人は、まず主たる債務者に催告をすべき旨を請求することができる。」(452条本文)。したがって、設問の場合、保証人は、債権者が直ちに催告をすれば弁済を得ることができた限度において、その義務を免れる。
ウ 誤り。「個人貸金等根保証契約において元本確定期日の定めがない場合(前項の規定により元本確定期日の定めがその効力を生じない場合を含む。)には、その元本確定期日は、その個人貸金等根保証契約の締結の日から3年を経過する日とする」(465条の3第2項)。したがって、個人貸金等根保証契約は、主たる債務の元本の確定すべき期日の定めがなくても、その効力を生じる。
エ 誤り。大判明治40年6月18日は、主たる債務の弁済期限が延長された場合、その効力は保証債務に及ぶ旨判示している。したがって、主たる債務につき期限が延長されると、その効力は保証債務に及ぶ。
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問題文正答率:50.00%
第18問 指名債権の譲渡に関する次のアからオまでの各記述のうち,判例の趣旨に照らし正しいものを組み合わせたものは,後記1から5までのうちどれか。
- 債権譲渡の予約について確定日付のある証書による債務者の承諾がされても,予約の完結による債権譲渡の効力は,その承諾をもって第三者に対抗することができない。
- 将来発生すべき債権を目的とする債権譲渡契約は,その締結時において目的債権の発生が確実に期待されるものでなければ,効力を生じない。
- 未完成仕事部分に関する請負報酬金債権の譲渡について,債務者の異議をとどめない承諾がされても,譲受人がその債権が未完成仕事部分に関する請負報酬金債権であることを知っていた場合には,債務者は,その債権譲渡の承諾後に生じた仕事完成義務不履行を理由とする当該請負契約の解除をもって譲受人に対抗することができる。
- 同一の債権を目的とする債権譲渡と債権差押えとの間の優劣は,債権譲渡についての債務者以外の第三者に対する対抗要件が具備された時と債権差押命令が発令された時の先後で決する。
- 債権が二重に譲渡され,第一の債権譲渡について確定日付のある証書による通知が債務者に到達した後,第二の債権譲渡について確定日付のある証書による通知が債務者に到達した場合,第一の債権譲渡の確定日付が第二の債権譲渡の確定日付に後れるときは,第一の債権譲渡の譲受人は,債権の取得を第二の債権譲渡の譲受人に対抗することができない。
選択肢
ア 正しい。最判平成13年11月27日は、指名債権譲渡の予約について確定日付のある証書により債務者に対する通知又はその承諾がなされても、その予約の完結による債権譲渡の効力は、当該予約についてなされた通知又は承諾をもって、第三者に対抗することはできない旨判示している。したがって、設問の場合、予約の完結による債権譲渡の効力は、その承諾をもって第三者に対抗することができない。
ウ 解答不能。平成29年改正により、債務者の異議をとどめない承諾により、譲渡人に対抗できた事由を譲受人に対抗できなくなるとする改正前468条1項は削除された。そして、最判昭和42年10月27日は、設問と同様の事案について、債権譲渡がなされた時点で債務不履行が生じる原因が存在していたといえ、債務者は解除を譲受人に対抗できるとしていた。したがって、現行法では本問は解答不能である。なお、明文の規定はないが、平成29年改正後は、抗弁の切断には、債務者の抗弁を抗棄する旨の意思表示が必要となる。
ア 正しい。最判平成13年11月27日は、指名債権譲渡の予約について確定日付のある証書により債務者に対する通知又はその承諾がなされても、その予約の完結による債権譲渡の効力は、当該予約についてなされた通知又は承諾をもって、第三者に対抗することはできない旨判示している。したがって、設問の場合、予約の完結による債権譲渡の効力は、その承諾をもって第三者に対抗することができない。
オ 誤り。最判昭和49年3月7日は、「債権が二重に譲渡された場合、譲受人相互の間の優劣は、通知又は承諾に付された確定日附の先後によって定めるべきではなく、確定日附のある通知が債務者に到達した日時又は確定日附のある債務者の承諾の日時の先後によって決すべき」とする。したがって、設問の場合、第一の債権譲渡の確定日付が第二の債権譲渡の確定日付に後れるときでも、第一の債権譲渡の譲受人は、債権の取得を第二の債権譲渡の譲受人に対抗することができる。
イ 誤り。「債権の譲渡は、その意思表示の時に債権が現に発生していることを要しない」(466条の6第1項)。本条1項は、判例法理(最判平成11年1月29日)を平成29年改正の際に明文化したものである。したがって、将来発生すべき債権を目的とする債権譲渡契約は、その締結時において目的債権の発生が確実にきたされるものでなくても、効力を生じる。
ウ 解答不能。平成29年改正により、債務者の異議をとどめない承諾により、譲渡人に対抗できた事由を譲受人に対抗できなくなるとする改正前468条1項は削除された。そして、最判昭和42年10月27日は、設問と同様の事案について、債権譲渡がなされた時点で債務不履行が生じる原因が存在していたといえ、債務者は解除を譲受人に対抗できるとしていた。したがって、現行法では本問は解答不能である。なお、明文の規定はないが、平成29年改正後は、抗弁の切断には、債務者の抗弁を抗棄する旨の意思表示が必要となる。
イ 誤り。「債権の譲渡は、その意思表示の時に債権が現に発生していることを要しない」(466条の6第1項)。本条1項は、判例法理(最判平成11年1月29日)を平成29年改正の際に明文化したものである。したがって、将来発生すべき債権を目的とする債権譲渡契約は、その締結時において目的債権の発生が確実にきたされるものでなくても、効力を生じる。
エ 誤り。最判昭和58年10月4日は、債券の譲受人と同一債権に対し債権差押・転付命令の執行をした者との間の優劣は、確定日付のある譲渡通知が債務者に到達した日時又は確定日付のある債務者の承諾の日時と債権差押・転付命令が第三債務者に送達された日時の先後によって決すべき旨判示する。したがって、同一の債権を目的とする債権譲渡と債権差押えとの間の優劣は、確定日付のある譲渡通知が債務者に到達した日時又は確定日付のある債務者の承諾の日時と債権差押命令が第三債務者に送達された日時の先後で決する。
エ 誤り。最判昭和58年10月4日は、債券の譲受人と同一債権に対し債権差押・転付命令の執行をした者との間の優劣は、確定日付のある譲渡通知が債務者に到達した日時又は確定日付のある債務者の承諾の日時と債権差押・転付命令が第三債務者に送達された日時の先後によって決すべき旨判示する。したがって、同一の債権を目的とする債権譲渡と債権差押えとの間の優劣は、確定日付のある譲渡通知が債務者に到達した日時又は確定日付のある債務者の承諾の日時と債権差押命令が第三債務者に送達された日時の先後で決する。
オ 誤り。最判昭和49年3月7日は、「債権が二重に譲渡された場合、譲受人相互の間の優劣は、通知又は承諾に付された確定日附の先後によって定めるべきではなく、確定日附のある通知が債務者に到達した日時又は確定日附のある債務者の承諾の日時の先後によって決すべき」とする。したがって、設問の場合、第一の債権譲渡の確定日付が第二の債権譲渡の確定日付に後れるときでも、第一の債権譲渡の譲受人は、債権の取得を第二の債権譲渡の譲受人に対抗することができる。
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問題文正答率:50.00%
第19問 債務者Aが債権者Bに対して負う金銭債務(以下「本件債務」という。)に関する次のアからオまでの各記述のうち,正しいものを組み合わせたものは,後記1から5までのうちどれか。
- Bは,Aの意思に反しては,本件債務を免除することができない。
- 第三者は,Aの意思に反しても,本件債務を主たる債務とする保証をすることができる。
- 本件債務の物上保証人は,Aの意思に反しては,本件債務を弁済することができない。
- Bと第三者Cとは,Aの意思に反しては,Cに債務者を交替する更改をすることができない。
- Bは,Aの意思に反しては,Bが第三者に対して負う金銭債務について,本件債務に係る債権をもって代物弁済をすることができない。
選択肢
ア 誤り。「債権者が債務者に対して債務を免除する意思を表示したときは、その債権は、消滅する」(519条)。「免除」は、債権者の一方的な意思表示によりなす単独行為である。したがって、Bは、Aの意思に反しても、本件債務を免除することができる。
イ 正しい。「主たる債務者の意思に反して保証をした者は、主たる債務者が現に利益を受けている限度においてのみ求償権を有する」(462条2項前段)。本規定は、第三者が、主たる債務者の意思に反しても保証をすることができることを前提としている。したがって、第三者は、Aの意思に反しても、本件債務を主たる債務とする保証をすることができる。
ア 誤り。「債権者が債務者に対して債務を免除する意思を表示したときは、その債権は、消滅する」(519条)。「免除」は、債権者の一方的な意思表示によりなす単独行為である。したがって、Bは、Aの意思に反しても、本件債務を免除することができる。
オ 誤り。「弁済をすることができる者(以下「弁済者」という。)が、債権者との間で、債務者の負担した給付に代えて他の給付をすることにより債務を消滅させる旨の契約をした場合において、その弁済者が当該他の給付をしたときは、その給付は、弁済と同一の効力を有する」(482条)。「当事者が債権の譲渡を禁止し、又は制限する意思表示(以下「譲渡制限の意思表示」という。)をしたときであっても、債権の譲渡は、その効力を妨げられない」(466条2項)。したがって、Bは、Aの意思に反しても、Bが第三者に対して負う金銭債務について、本件債務に係る債権をもって代物弁済をすることができる。
イ 正しい。「主たる債務者の意思に反して保証をした者は、主たる債務者が現に利益を受けている限度においてのみ求償権を有する」(462条2項前段)。本規定は、第三者が、主たる債務者の意思に反しても保証をすることができることを前提としている。したがって、第三者は、Aの意思に反しても、本件債務を主たる債務とする保証をすることができる。
エ 誤り。「債務者の交替による更改は、債権者と更改後に債務者となる者との契約によってすることができる。この場合において、更改は、債権者が更改前の債務者に対してその契約をした旨を通知した時に、その効力を生ずる」(514条1項)。したがって、Bと第三者Cとは、Aの意思に反しても、Cに債務者を交替する更改をすることができる。なお、改正前514条は、「債務者の交替による更改は、債権者と更改後に債務者となる者との契約によってすることができる。ただし、更改前の債務者の意思に反するときは、この限りでない」と規定していた。
ウ 誤り。「弁済をするについて正当な利益を有する者でない第三者は、債務者の意思に反して弁済することができない」(474条2項前段)。そして、物上保証人は「弁済をするについて正当な利益を有する者」に含まれる(最判昭和39年4月21日)。したがって、本件債務の物上保証人は、Aの意思に反しても、本件債務を弁済することができる。
エ 誤り。「債務者の交替による更改は、債権者と更改後に債務者となる者との契約によってすることができる。この場合において、更改は、債権者が更改前の債務者に対してその契約をした旨を通知した時に、その効力を生ずる」(514条1項)。したがって、Bと第三者Cとは、Aの意思に反しても、Cに債務者を交替する更改をすることができる。なお、改正前514条は、「債務者の交替による更改は、債権者と更改後に債務者となる者との契約によってすることができる。ただし、更改前の債務者の意思に反するときは、この限りでない」と規定していた。
ウ 誤り。「弁済をするについて正当な利益を有する者でない第三者は、債務者の意思に反して弁済することができない」(474条2項前段)。そして、物上保証人は「弁済をするについて正当な利益を有する者」に含まれる(最判昭和39年4月21日)。したがって、本件債務の物上保証人は、Aの意思に反しても、本件債務を弁済することができる。
オ 誤り。「弁済をすることができる者(以下「弁済者」という。)が、債権者との間で、債務者の負担した給付に代えて他の給付をすることにより債務を消滅させる旨の契約をした場合において、その弁済者が当該他の給付をしたときは、その給付は、弁済と同一の効力を有する」(482条)。「当事者が債権の譲渡を禁止し、又は制限する意思表示(以下「譲渡制限の意思表示」という。)をしたときであっても、債権の譲渡は、その効力を妨げられない」(466条2項)。したがって、Bは、Aの意思に反しても、Bが第三者に対して負う金銭債務について、本件債務に係る債権をもって代物弁済をすることができる。
解説・コメント
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問題文正答率:50.00%
第20問 弁済の提供に関する次のアからオまでの各記述のうち,判例の趣旨に照らし誤っているものを組み合わせたものは,後記1から5までのうちどれか。
- 売買代金債権が譲渡され,債務者対抗要件が具備された場合であっても,債務者によるその代金の弁済の提供は,売買代金債権の譲渡人の現在の住所においてすれば足りる。
- 特定物の売主は,その特定物を売買契約の締結当時から自己の住所に保管している場合,その引渡債務について弁済の提供をするに当たり,買主に対し,引渡しの準備をしたことを通知してその受領の催告をすれば足りる。
- 賃借人には債務不履行がないのに,賃貸人が債務不履行による賃貸借契約の解除を主張して賃料の受領を拒絶し,口頭の提供をしても賃料の弁済を受領しない意思が明確である場合,賃借人は,賃料債務について,口頭の提供をしなくても,履行遅滞の責任を負わない。
- 不法行為の加害者Aが被害者Bに対して第一審判決で支払を命じられた損害賠償金1億円の全額について弁済の提供をしたが,その後,控訴審判決において損害賠償金が2億円に増額され,それが確定した場合,Aがした弁済の提供は,無効となる。
- 甲土地の賃貸人がその賃料の支払を催告したのに対し,賃借人が,賃貸借の目的物ではない乙土地も共に賃貸借の目的物であると主張して,甲土地の賃料額を超える額の金員を,その全額が受領されるのでなければ支払わない意思で提供した場合,債務の本旨に従った弁済の提供があったものとはいえない。
選択肢
ア 誤り。「弁済をすべき場所について別段の意思表示がないときは、特定物の引渡しは債権発生の時にその物が存在した場所において、その他の弁済は債権者の現在の住所において、それぞれしなければならない(484条1項)。売買代金債権の弁済は、「その他の弁済」に該当し、「債権者の現在の住所においてしなければならない(持参債務の原則)。そして、債権譲渡がなされた場合、新債権者の住所が弁済地となる。したがって、設問の場合、債務者によるその代金の弁済の提供は、売買代金債権の譲受人の現在の住所においてしなければならない。
ウ 正しい。最判昭和32年6月5日は、債権者が契約そのものの存在を否定している等弁済を受領しない意思が明確と認められる場合には、口頭の提供をしなくても債務不履行責任を負わない旨判示している。したがって、設問の場合、賃借人は、賃料債務について、口頭の提供をしなくても、履行遅滞の責任を負わない。
ア 誤り。「弁済をすべき場所について別段の意思表示がないときは、特定物の引渡しは債権発生の時にその物が存在した場所において、その他の弁済は債権者の現在の住所において、それぞれしなければならない(484条1項)。売買代金債権の弁済は、「その他の弁済」に該当し、「債権者の現在の住所においてしなければならない(持参債務の原則)。そして、債権譲渡がなされた場合、新債権者の住所が弁済地となる。したがって、設問の場合、債務者によるその代金の弁済の提供は、売買代金債権の譲受人の現在の住所においてしなければならない。
エ 誤り。最判平成6年7月18日は、「加害者が被害者に対し、第一審判決によって支払を命じられた損害賠償金の全額を任意に弁済のため提供した場合、その提供額が損害賠償債務の全額に満たないことが控訴審における審理判断の結果判明したときであっても、原則としてその弁済の提供はその範囲において有効」とする。したがって、設問の場合、Aがした弁済の提供は、有効である。
イ 正しい。「弁済をすべき場所について別段の意思表示がないときは、特定物の引渡しは債権発生の時にその物が存在した場所において、その他の弁済は債権者の現在の住所において、それぞれしなければならない(484条1項)。「特定物の引渡しは債権発生の時にその物が存在した場所において」しなければならない(取立債務)。そして、取立債務は、「債務の履行について債権者の行為を要するとき」に該当し、「弁済の準備をしたことを通知してその受領を催告すれば足りる」(493条ただし書)。したがって、設問の場合、売主は、買主に対し、引渡しの準備をしたことを通知してその受領を催告すれば足りる。
ウ 正しい。最判昭和32年6月5日は、債権者が契約そのものの存在を否定している等弁済を受領しない意思が明確と認められる場合には、口頭の提供をしなくても債務不履行責任を負わない旨判示している。したがって、設問の場合、賃借人は、賃料債務について、口頭の提供をしなくても、履行遅滞の責任を負わない。
イ 正しい。「弁済をすべき場所について別段の意思表示がないときは、特定物の引渡しは債権発生の時にその物が存在した場所において、その他の弁済は債権者の現在の住所において、それぞれしなければならない(484条1項)。「特定物の引渡しは債権発生の時にその物が存在した場所において」しなければならない(取立債務)。そして、取立債務は、「債務の履行について債権者の行為を要するとき」に該当し、「弁済の準備をしたことを通知してその受領を催告すれば足りる」(493条ただし書)。したがって、設問の場合、売主は、買主に対し、引渡しの準備をしたことを通知してその受領を催告すれば足りる。
オ 最判昭和32年11月27日は、本肢と同様に、賃借人が賃貸人に対し争いとなっている目的物の賃料を合わせて提供した事案で、債務の本旨に従った履行の提供があったものとすることはできず、賃貸人が提供の全額について受領を拒絶するの相当とする旨を判示している。したがって、設問の場合、債務の本旨に従った弁済の提供があったものとはいえない。
エ 誤り。最判平成6年7月18日は、「加害者が被害者に対し、第一審判決によって支払を命じられた損害賠償金の全額を任意に弁済のため提供した場合、その提供額が損害賠償債務の全額に満たないことが控訴審における審理判断の結果判明したときであっても、原則としてその弁済の提供はその範囲において有効」とする。したがって、設問の場合、Aがした弁済の提供は、有効である。
オ 最判昭和32年11月27日は、本肢と同様に、賃借人が賃貸人に対し争いとなっている目的物の賃料を合わせて提供した事案で、債務の本旨に従った履行の提供があったものとすることはできず、賃貸人が提供の全額について受領を拒絶するの相当とする旨を判示している。したがって、設問の場合、債務の本旨に従った弁済の提供があったものとはいえない。
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問題文正答率:50.00%
第21問 更改及び混同に関する次のアからオまでの各記述のうち,判例の趣旨に照らし誤っているものを組み合わせたものは,後記1から5までのうちどれか。
- 消費貸借契約の成立後,第三者が借主と連帯して債務弁済の責任を負担することを約することは,更改に当たる。
- 債権者の交替による更改は,確定日付のある証書によってしなければ,第三者に対抗することができない。
- 保証人が主たる債務者を単独で相続した場合,保証債務を担保するために抵当権が設定されているときは,保証債務は消滅しない。
- 更改の当事者は,更改前の債務の目的の限度であれば,その債務の担保として第三者が設定した抵当権を,その第三者の承諾を得ずに更改後の債務に移すことができる。
- Aが所有する甲建物の賃借人BがAから甲建物を譲り受けて占有を継続していたが,CがAから甲建物を譲り受け,その旨の所有権移転登記を経由したため,Bにおいて甲建物の所有権の取得をCに対抗することができなくなったときは,賃借権は,Cに対する関係で消滅しなかったものとなる。
選択肢
ア 誤り。「当事者が従前の債務に代えて、新たな債務であって次に掲げるものを発生させる契約をしたときは、従前の債務は、更改によって消滅する。一 従前の給付の内容について重要な変更をするもの 二従前の債務者が第三者と交替するもの 三 従前の債権者が第三者と交替するもの」(513条)。第三者が借主と連帯して債務弁済の責任を負担することは、いずれにも該当しない。したがって、設問の場合、更改に当たらない。
エ 誤り。「債権者(債権者の交替による更改にあっては、更改前の債権者)は、更改前の債務の目的の限度において、その債務の担保として設定された質権又は抵当権を更改後の債務に移すことができる。ただし、第三者がこれを設定した場合には、その承諾を得なければならない」(518条1項)。したがって、設問の場合、第三者が設定した抵当権を、その第三者の承諾を得ずに更改後の債務に移すことはできない。
ア 誤り。「当事者が従前の債務に代えて、新たな債務であって次に掲げるものを発生させる契約をしたときは、従前の債務は、更改によって消滅する。一 従前の給付の内容について重要な変更をするもの 二従前の債務者が第三者と交替するもの 三 従前の債権者が第三者と交替するもの」(513条)。第三者が借主と連帯して債務弁済の責任を負担することは、いずれにも該当しない。したがって、設問の場合、更改に当たらない。
オ 正しい。最判昭和40年12月21日は、「不動産の賃借人が賃貸人から該不動産を譲り受けてその旨の所有権移転登記をしないうちに、第三者が右不動産を二重に譲り受けてその旨の所有権移転登記を経由したため、前の譲受人たる賃借人において右不動産の取得を後の譲受人たる第三者に対抗できなくなったような場合には、一たん混同によって消滅した右賃借権は、右第三者に対する関係では、同人の所有権取得によって、消滅しなかったものとなる」とする。したがって、設問の場合、Bの賃借権は、Cに対する関係で消滅しなかったものとなる。
イ 正しい。「債権者の交替による更改は、確定日付のある証書によってしなければ、第三者に対抗することができない」(515条2項)。
ウ 正しい。最判平成25年9月13日は、主たる債務者を相続した保証人は、従前の保証人たる地位に併せて、主たる債務者たる地位も兼ねる旨判示する。したがって、設問の場合、保証債務を担保するために抵当権が設定されているか否かにかかわらず、保証債務は消滅しない。
イ 正しい。「債権者の交替による更改は、確定日付のある証書によってしなければ、第三者に対抗することができない」(515条2項)。
オ 正しい。最判昭和40年12月21日は、「不動産の賃借人が賃貸人から該不動産を譲り受けてその旨の所有権移転登記をしないうちに、第三者が右不動産を二重に譲り受けてその旨の所有権移転登記を経由したため、前の譲受人たる賃借人において右不動産の取得を後の譲受人たる第三者に対抗できなくなったような場合には、一たん混同によって消滅した右賃借権は、右第三者に対する関係では、同人の所有権取得によって、消滅しなかったものとなる」とする。したがって、設問の場合、Bの賃借権は、Cに対する関係で消滅しなかったものとなる。
ウ 正しい。最判平成25年9月13日は、主たる債務者を相続した保証人は、従前の保証人たる地位に併せて、主たる債務者たる地位も兼ねる旨判示する。したがって、設問の場合、保証債務を担保するために抵当権が設定されているか否かにかかわらず、保証債務は消滅しない。
エ 誤り。「債権者(債権者の交替による更改にあっては、更改前の債権者)は、更改前の債務の目的の限度において、その債務の担保として設定された質権又は抵当権を更改後の債務に移すことができる。ただし、第三者がこれを設定した場合には、その承諾を得なければならない」(518条1項)。したがって、設問の場合、第三者が設定した抵当権を、その第三者の承諾を得ずに更改後の債務に移すことはできない。
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第22問 同時履行に関する次のアからオまでの各記述のうち,判例の趣旨に照らし正しいものを組み合わせたものは,後記1から5までのうちどれか。
- 有償の委任契約における委任者の報酬支払義務と受任者の事務処理義務とは,同時履行の関係にある。
- 売買の目的物である未登記建物に隠れた瑕疵があることを理由に売買契約が解除された場合,売主の代金返還義務と買主の建物返還義務とは,同時履行の関係にある。
- 建物賃貸借契約が終了し賃借人が造作買取請求権を行使した場合,賃貸人の造作買取代金支払義務と賃借人の建物明渡義務とは,同時履行の関係にある。
- 未成年者が行為能力の制限を理由に動産売買契約を取り消した場合,両当事者が互いに負う返還義務は,同時履行の関係にある。
- 期間満了による建物の賃貸借契約終了に伴う賃借人の建物明渡義務と賃貸人の敷金返還義務とは,同時履行の関係にある。
選択肢
ア 誤り。「受任者は、報酬を受けるべき場合には、委任事務を履行した後でなければ、これを請求することができない」(648条2項本文)。したがって、有償の委任契約における委任者の報酬支払義務と受任者の事務処理義務とは、同時履行の関係にはない。
ウ 誤り。最判昭和29年7月22日は、造作買取請求権を行使した賃借人は、造作代金支払義務と家屋明渡義務との同時履行の抗弁を主張することはできない旨判示する。したがって、設問の場合、賃貸人の造作代金支払義務と賃借人の建物明渡義務とは、同時履行の関係にはない。
ア 誤り。「受任者は、報酬を受けるべき場合には、委任事務を履行した後でなければ、これを請求することができない」(648条2項本文)。したがって、有償の委任契約における委任者の報酬支払義務と受任者の事務処理義務とは、同時履行の関係にはない。
エ 正しい。最判昭和28年6月16日は、「未成年者の取消については原審のいう如く契約解除による原状回復義務に関する民法546条に準じ同法533条の準用ある」とする。したがって、未成年者が行為能力の制限を理由に動産売買契約を取り消した場合、両当事者が互いに負う返還義務は、同時履行の関係にある。
イ 正しい。「当事者の一方がその解除権を行使したときは、各当事者は、その相手方を原状に復させる義務を負う」(545条1項本文)。「第533条の規定は、前条の場合について準用する」(546条)。「双務契約の当事者の一方は、相手方がその債務の履行(債務の履行に代わる損害賠償の債務の履行を含む。)を提供するまでは、自己の債務の履行を拒むことができる(533条本文)。したがって、設問の場合、売主の代金返還義務と買主の建物返還義務とは、同時履行の関係にある。
エ 正しい。最判昭和28年6月16日は、「未成年者の取消については原審のいう如く契約解除による原状回復義務に関する民法546条に準じ同法533条の準用ある」とする。したがって、未成年者が行為能力の制限を理由に動産売買契約を取り消した場合、両当事者が互いに負う返還義務は、同時履行の関係にある。
イ 正しい。「当事者の一方がその解除権を行使したときは、各当事者は、その相手方を原状に復させる義務を負う」(545条1項本文)。「第533条の規定は、前条の場合について準用する」(546条)。「双務契約の当事者の一方は、相手方がその債務の履行(債務の履行に代わる損害賠償の債務の履行を含む。)を提供するまでは、自己の債務の履行を拒むことができる(533条本文)。したがって、設問の場合、売主の代金返還義務と買主の建物返還義務とは、同時履行の関係にある。
オ 誤り。「賃貸人は、敷金」「を受け取っている場合において、次に掲げるときは、賃借人に対し、」「残額を返還しなければならない。一 賃貸借が終了し、かつ、賃貸物の返還を受けたとき」(622条の2第1項1号)。本条1項1号は、最判昭和48年2月2日の判示するところを明文化したものであり、賃貸目的物の返還が先履行となる。したがって、賃貸借契約終了に伴う賃借人の建物明渡義務と賃貸人の敷金返還義務とは、同時履行の関係にはない。
ウ 誤り。最判昭和29年7月22日は、造作買取請求権を行使した賃借人は、造作代金支払義務と家屋明渡義務との同時履行の抗弁を主張することはできない旨判示する。したがって、設問の場合、賃貸人の造作代金支払義務と賃借人の建物明渡義務とは、同時履行の関係にはない。
オ 誤り。「賃貸人は、敷金」「を受け取っている場合において、次に掲げるときは、賃借人に対し、」「残額を返還しなければならない。一 賃貸借が終了し、かつ、賃貸物の返還を受けたとき」(622条の2第1項1号)。本条1項1号は、最判昭和48年2月2日の判示するところを明文化したものであり、賃貸目的物の返還が先履行となる。したがって、賃貸借契約終了に伴う賃借人の建物明渡義務と賃貸人の敷金返還義務とは、同時履行の関係にはない。
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選択肢
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第24問 AとBは,平成31年4月1日,A所有の中古自転車(以下「甲」という。)を,同月10日引渡し,同月20日代金支払の約定でBに売却する旨の売買契約を締結した。この事例に関する次のアからオまでの各記述のうち,判例の趣旨に照らし誤っているものを組み合わせたものは,後記1から5までのうちどれか。
- 甲は,平成31年4月8日,Bの責めに帰すべき事由により滅失した。この場合において,AがBに対して同月20日に代金の支払を請求したときは,Bは,この請求を拒むことができない。
- Aは,Bに対し,平成31年4月10日,甲を引き渡したが,甲には売買契約の締結前から隠れた瑕疵があった。この場合において,その瑕疵の存在により契約をした目的を達することができないときは,Bは,売買契約を解除することができる。
- Aは,Bに対し,平成31年4月10日,甲を引き渡したが,Bは,同月20日を経過しても代金を支払わず,同月21日,事情を知らないCに甲を売却し,引き渡した。この場合において,Aが相当の期間を定めて催告してもBが代金を支払わないときは,Aは,Bとの間の売買契約を解除し,Cに対し,甲の返還を求めることができる。
- AがBに約定どおり甲を引き渡さなかったことから,Bは,Aに対し,平成31年4月21日,代金につき弁済の提供をしないまま,甲の引渡しを求めた。この場合,Aは,Bに対し,同時履行の抗弁権を主張して,Bからの引渡請求を拒むことができる。
- Aは,Bに対し,平成31年4月25日,甲を引き渡したが,Bは,Aに対し,その後も代金を支払っていない。この場合,Aは,Bに対し,甲の代金及び同月21日からの利息の支払を求めることができる。
選択肢
ア 正しい。「債権者の責めに帰すべき事由によって債務を履行することができなくなったときは、債権者は、反対給付の履行を拒むことができない」(536条2項前段)。したがって、設問の場合、AがBに対して平成31年4月20日に代金の支払を請求したときは、Bは、この請求を拒むことができない。
ウ 誤り。「当事者の一方がその解除権を行使したときは、各当事者は、その相手方を原状に復させる義務を負う。ただし、第三者の権利を害することはできない」(545条1項)。「第三者」とは、解除された契約の目的物について、解除以前に新たな権利を取得した者をいうと解されている。また、「第三者」が保護されるためには対抗要件を必要とする(最判昭和33年6月14日)。したがって、設問の場合、Aは、Bとの売買契約を解除し、Cに対し、甲の返還を求めることはできない。
ア 正しい。「債権者の責めに帰すべき事由によって債務を履行することができなくなったときは、債権者は、反対給付の履行を拒むことができない」(536条2項前段)。したがって、設問の場合、AがBに対して平成31年4月20日に代金の支払を請求したときは、Bは、この請求を拒むことができない。
エ 正しい。「双務契約の当事者の一方は、相手方がその債務の履行(債務の履行に代わる損害賠償の債務の履行を含む。)を提供するまでは、自己の債務の履行を拒むことができる。ただし、相手方の債務が弁済期にないときは、この限りではない」(533条)。平成31年4月20日の経過により、Bの債務は弁済期にある。したがって、設問の場合、Aは、Bに対し、同時履行の抗弁権を主張して、Bからの引渡請求を拒むことができる。
イ 解答不能。平成29年改正により、売買の目的物に隠れた瑕疵がある場合も、契約不適合として検討することになった。そして、契約の解除は、564条により、541条・542条の要件を満たすか検討することになる。541条は、契約の解除を行うためには催告を必要とするが、イの記述では催告がなされておらず同条の要件を満たさない。542条は、無催告の解除を認めているが、イの記述では542条の規定する要件を満たすか否か判断できない。したがって、解答不能となる。
エ 正しい。「双務契約の当事者の一方は、相手方がその債務の履行(債務の履行に代わる損害賠償の債務の履行を含む。)を提供するまでは、自己の債務の履行を拒むことができる。ただし、相手方の債務が弁済期にないときは、この限りではない」(533条)。平成31年4月20日の経過により、Bの債務は弁済期にある。したがって、設問の場合、Aは、Bに対し、同時履行の抗弁権を主張して、Bからの引渡請求を拒むことができる。
イ 解答不能。平成29年改正により、売買の目的物に隠れた瑕疵がある場合も、契約不適合として検討することになった。そして、契約の解除は、564条により、541条・542条の要件を満たすか検討することになる。541条は、契約の解除を行うためには催告を必要とするが、イの記述では催告がなされておらず同条の要件を満たさない。542条は、無催告の解除を認めているが、イの記述では542条の規定する要件を満たすか否か判断できない。したがって、解答不能となる。
オ 誤り。「買主は、引渡しの日から、代金の利息を支払う義務を負う。ただし、代金の支払について期限があるときは、その期限が到来するまでは、利息を支払うことを要しない」(575条2項)。そして、Aが、Bに対し、甲を引き渡したのは、平成31年4月25日である。したがって、Aは、Bに対し、平成31年4月21日からの利息の支払を求めることはできない。
ウ 誤り。「当事者の一方がその解除権を行使したときは、各当事者は、その相手方を原状に復させる義務を負う。ただし、第三者の権利を害することはできない」(545条1項)。「第三者」とは、解除された契約の目的物について、解除以前に新たな権利を取得した者をいうと解されている。また、「第三者」が保護されるためには対抗要件を必要とする(最判昭和33年6月14日)。したがって、設問の場合、Aは、Bとの売買契約を解除し、Cに対し、甲の返還を求めることはできない。
オ 誤り。「買主は、引渡しの日から、代金の利息を支払う義務を負う。ただし、代金の支払について期限があるときは、その期限が到来するまでは、利息を支払うことを要しない」(575条2項)。そして、Aが、Bに対し、甲を引き渡したのは、平成31年4月25日である。したがって、Aは、Bに対し、平成31年4月21日からの利息の支払を求めることはできない。
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第25問 資材置場とするためにされた建物所有を目的としない土地の賃貸借に関する次のアからオまでの各記述のうち,誤っているものを組み合わせたものは,後記1から5までのうちどれか。
- 賃貸借は,書面でしなければ,その効力を生じない。
- 賃貸借の存続期間は,20年を超えることができない。
- 当事者が賃貸借の期間を定めた場合であっても,賃貸人がその期間内に解約をする権利を合意により留保したときは,賃貸人は,いつでも解約の申入れをすることができる。
- 賃貸借の期間が満了した後賃借人が土地の使用を継続する場合において,賃貸人がこれを知りながら異議を述べないときは,従前の賃貸借と同一の条件で更に賃貸借をしたものと推定される。
- 賃貸借の期間を定めなかった場合において,当事者が解約の申入れをしたときは,賃貸借は,解約申入れの意思表示が相手方に到達した時に終了する。
選択肢
ア 誤り。「賃貸借は、当事者の一方がある物の使用及び収益を相手方にさせることを約し、相手方がこれに対してその賃料を支払うこと及び引渡しを受けた物を契約が終了したときに返還することを約することによって、その効力を生ずる」(601条)。賃貸借は、不要式契約であり、書面の作成は要しない。
イ 誤り。「賃貸借の存続期間は、50年を超えることができない」(604条1項前段)。
ア 誤り。「賃貸借は、当事者の一方がある物の使用及び収益を相手方にさせることを約し、相手方がこれに対してその賃料を支払うこと及び引渡しを受けた物を契約が終了したときに返還することを約することによって、その効力を生ずる」(601条)。賃貸借は、不要式契約であり、書面の作成は要しない。
オ 誤り。「当事者が賃貸借の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすること
ができる。この場合においては、次の各号に掲げる賃貸借は、解約の申入れの日からそれぞれ当該各号に定める期間を経過することによって終了する。一 土地の賃貸借 1年」(617条1項1号)。
イ 誤り。「賃貸借の存続期間は、50年を超えることができない」(604条1項前段)。
エ 正しい。「賃貸借の期間が満了した後賃借人が賃借物の使用又は収益を継続する場合において、賃貸人がこれを知りながら異議を述べないときは、従前の賃貸借と同一の条件で更に賃貸借をしたものと推定する(619条1項前段)。
ウ 正しい。「当事者が賃貸借の期間を定めた場合であっても、その一方又は双方がその期間内に解約をする権利を留保したときは、前条の規定を準用する」(618条)。「当事者が賃貸借の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる」(617条1項)。
エ 正しい。「賃貸借の期間が満了した後賃借人が賃借物の使用又は収益を継続する場合において、賃貸人がこれを知りながら異議を述べないときは、従前の賃貸借と同一の条件で更に賃貸借をしたものと推定する(619条1項前段)。
ウ 正しい。「当事者が賃貸借の期間を定めた場合であっても、その一方又は双方がその期間内に解約をする権利を留保したときは、前条の規定を準用する」(618条)。「当事者が賃貸借の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる」(617条1項)。
オ 誤り。「当事者が賃貸借の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合においては、次の各号に掲げる賃貸借は、解約の申入れの日からそれぞれ当該各号に定める期間を経過することによって終了する。一 土地の賃貸借 1年」(617条1項1号)。
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第26問 請負人の担保責任に関する次のアからオまでの各記述のうち,誤っているものを組み合わせたものは,後記1から5までのうちどれか。
- 仕事の目的物に重要でない瑕疵がある場合において,その修補に過分の費用を要するときは,注文者は,請負人に対し,瑕疵の修補を請求することができない。
- 仕事の目的物に瑕疵があり,その修補を請求することができる場合であっても,注文者は,請負人に対し,瑕疵の修補に代わる損害賠償を請求することができる。
- 仕事の目的物の瑕疵が注文者の与えた指図によって生じたときは,請負人は,その指図が不適当であることを知りながら注文者に告げなかったときであっても,瑕疵担保責任を負わない。
- 建物の建築の請負において,注文者による瑕疵修補の請求は,建物が完成した時から1年以内にしなければならない。
- 請負人は,瑕疵担保責任を負わない旨の特約をしたときであっても,知りながら告げなかった事実については,その責任を免れない。
選択肢
ア 正しい。559条により、562条が請負契約に準用されるため、注文者は請負人に対し目的物の修補を請求できるの原則である。しかし、「債務の履行が契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念に照らして不能であるときは、債権者は、その債務の履行を請求することはできない」(412条の2第1項)。設問における修補に過分の費用を要するときは、「債務の履行が契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念に照らして不能であるとき」に該当する。したがって、設問の場合、注文者は、請負人に対し、瑕疵の修補を請求することができない。
イ 正しい。559条により、564条が請負契約に準用されるため、415条により注文主は請負人が債務の本旨に従った履行をしないときは、損害賠償の請求をすることができる。そして、仕事の目的物に瑕疵があることは、債務の本旨に従った履行をしていないことになる。したがって、設問の場合、注文者は、請負人に対し、瑕疵の修補に代わる損害賠償を請求することができる。
ア 正しい。559条により、562条が請負契約に準用されるため、注文者は請負人に対し目的物の修補
を請求できるの原則である。しかし、「債務の履行が契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念に照らして不能であるときは、債権者は、その債務の履行を請求することはできない」(412条の2第1項)。設問における修補に過分の費用を要するときは、「債務の履行が契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念に照らして不能であるとき」に該当する。したがって、設問の場合、注文者は、請負人に対し、瑕疵の修補を請求することができない。
オ 正しい。559条により、562条が請負契約に準用されるため、請負人は、「知りながら告げなかった事実」「については、その責任を免れることはできない」。なお、担保責任に関する規定は任意規定であるから、これを排除する特約も有効である。
イ 正しい。559条により、564条が請負契約に準用されるため、415条により注文主は請負人が債務の本旨に従った履行をしないときは、損害賠償の請求をすることができる。そして、仕事の目的物に瑕疵があることは、債務の本旨に従った履行をしていないことになる。したがって、設問の場合、注文者は、請負人に対し、瑕疵の修補に代わる損害賠償を請求することができる。
ウ 誤り。「請負人が種類又は品質に関して契約の内容に適合しない仕事の目的物を注文者に引き渡したとき」「は、注文者は、注文者の供した材料の性質又は注文者の与えた指図によって生じた不適合を理由として、履行の追完の請求、報酬の減額の請求、損害賠償の請求及び契約の解除をすることができない。ただし、請負人がその材料又は指図が不適当であることを知りながら告げなかったときは、この限りでない」(636条)。したがって、設問の場合、請負人は、注文者の指図が不適当であることを知りながら注文者に告げなかったときは、担保責任を負う。
ウ 誤り。「請負人が種類又は品質に関して契約の内容に適合しない仕事の目的物を注文者に引き渡したとき」「は、注文者は、注文者の供した材料の性質又は注文者の与えた指図によって生じた不適合を理由として、履行の追完の請求、報酬の減額の請求、損害賠償の請求及び契約の解除をすることができない。ただし、請負人がその材料又は指図が不適当であることを知りながら告げなかったときは、この限りでない」(636条)。したがって、設問の場合、請負人は、注文者の指図が不適当であることを知りながら注文者に告げなかったときは、担保責任を負う。
エ 誤り。「注文者がその不適合を知った時から1年以内にその旨を請負人に通知しないときは、注文者は、その不適合を理由として、履行の追完の請求、報酬の減額の請求、損害賠償の請求及び契約の解除をすることができない」(636条本文)。担保責任の期間制限は、「注文者がその不適合を知った時から」起算される。
エ 誤り。「注文者がその不適合を知った時から1年以内にその旨を請負人に通知しないときは、注文者は、その不適合を理由として、履行の追完の請求、報酬の減額の請求、損害賠償の請求及び契約の解除をすることができない」(636条本文)。担保責任の期間制限は、「注文者がその不適合を知った時から」起算される。
オ 正しい。559条により、562条が請負契約に準用されるため、請負人は、「知りながら告げなかった事実」「については、その責任を免れることはできない」。なお、担保責任に関する規定は任意規定であるから、これを排除する特約も有効である。
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問題文正答率:50.00%
第27問 不法原因給付に関する次のアからオまでの各記述のうち,判例の趣旨に照らし正しいものを組み合わせたものは,後記1から5までのうちどれか。
- 強行法規に違反してされた給付であっても,不法原因給付に該当しないことがある。
- 登記された建物が不倫関係の維持を目的として贈与され,受贈者に引き渡されたが,所有権移転登記手続はされていない場合,贈与者は,受贈者に対し,建物の明渡請求をすることができない。
- 贈与に基づく動産の引渡しが不法原因給付に該当し,不当利得に基づく動産の返還請求をすることができない場合,贈与者は,受贈者に対し,所有権に基づく動産の返還請求をすることができない。
- 不法原因給付の給付者と受領者との間において,その給付後に,その原因となった契約を合意の上解除してその給付を返還する特約をしたとしても,給付者は,その返還を請求することができない。
- 消費貸借が,その成立の経緯において,貸主の側に少しでも不法があったときは,借主の側に多大の不法があったとしても,貸主は貸金の返還を請求することができない。
選択肢
ア 正しい。最判昭和37年3月8日は、708条に規定する不法原因給付というためには、その原因となる行為が、強行法規に違反した不適法なものであるだけではなく、その当時の社会における倫理、道徳に反した醜悪なものであることが必要である旨判示する。したがって、強行法規に違反してされた給付であっても、不法原因給付に該当しないことがある。
ウ 正しい。最判昭和45年10月21日は、「給付者は、不当利得に基づく返還請求をすることが許されないばかりでなく、目的物の所有権が自己にあることを理由として、給付した物の返還を請求することも許されない」とする。したがって、設問の場合、贈与者は、受贈者に対し、所有権に基づく動産の返還請求をすることができない。
ア 正しい。最判昭和37年3月8日は、708条に規定する不法原因給付というためには、その原因となる行為が、強行法規に違反した不適法なものであるだけではなく、その当時の社会における倫理、道徳に反した醜悪なものであることが必要である旨判示する。したがって、強行法規に違反してされた給付であっても、不法原因給付に該当しないことがある。
エ 誤り。最判昭和28年1月22日は、「受領者においてその給付を受けたものをその給付を為した者に対し任意返還することは勿論、曩に給付を受けた不法原因契約を合意の上解除してその給付を返還する特約をすることは、同条の禁ずるところでない」とする。したがって、設問の場合、給付者は、その返還を請求することができる。
イ 誤り。最判昭和46年10月28日は、「贈与が不法の原因に基づくものであり、同条にいう給付があったとして贈与者の返還請求を拒みうるとするためには、本件のような既登記の建物にあっては、その占有の移転のみでは足りず、所有権移転登記手続が履践されていることをも要する」とする。したがって、設問の場合、贈与者は、受贈者に対し、建物の明渡請求をすることができる。
エ 誤り。最判昭和28年1月22日は、「受領者においてその給付を受けたものをその給付を為した者に対し任意返還することは勿論、曩に給付を受けた不法原因契約を合意の上解除してその給付を返還する特約をすることは、同条の禁ずるところでない」とする。したがって、設問の場合、給付者は、その返還を請求することができる。
イ 誤り。最判昭和46年10月28日は、「贈与が不法の原因に基づくものであり、同条にいう給付があったとして贈与者の返還請求を拒みうるとするためには、本件のような既登記の建物にあっては、その占有の移転のみでは足りず、所有権移転登記手続が履践されていることをも要する」とする。したがって、設問の場合、贈与者は、受贈者に対し、建物の明渡請求をすることができる。
オ 最判昭和29年8月31日は、給付者、受給者双方に不法な点がある場合でも、給付者のそれが受給者に比べて微弱なものであれば、90条も708条も適用はなく、給付者から受給者に対する目的物の返還請求が認められる旨判示する。したがって、設問の場合、貸主は貸金の返還請求をすることができる。
ウ 正しい。最判昭和45年10月21日は、「給付者は、不当利得に基づく返還請求をすることが許されないばかりでなく、目的物の所有権が自己にあることを理由として、給付した物の返還を請求することも許されない」とする。したがって、設問の場合、贈与者は、受贈者に対し、所有権に基づく動産の返還請求をすることができない。
オ 最判昭和29年8月31日は、給付者、受給者双方に不法な点がある場合でも、給付者のそれが受給者に比べて微弱なものであれば、90条も708条も適用はなく、給付者から受給者に対する目的物の返還請求が認められる旨判示する。したがって、設問の場合、貸主は貸金の返還請求をすることができる。
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問題文正答率:50.00%
第28問 不法行為に関する次のアからオまでの各記述のうち,判例の趣旨に照らし正しいものを組み合わせたものは,後記1から5までのうちどれか。
- 土地の工作物の設置又は保存に瑕疵があることによって他人に損害が生じ,Aがその工作物の占有者として損害賠償の責任を負う場合において,その損害を賠償したAは,その損害の原因について責任を負うBに対し,求償権を行使することができる。
- Aが所有する樹木の植栽又は支持に瑕疵があることによってBに損害が生じた場合であっても,Aが相当の注意をもってその管理をしていたときは,Aが損害賠償の責任を負うことはない。
- Aが所有する甲建物の設置又は保存に瑕疵があることによってBに損害が生じた場合には,その瑕疵がAの前の所有者が甲建物を所有していた時期に生じたものであるときであっても,Aは,甲建物の所有者として損害賠償の責任を負う。
- Aがその所有する甲建物をBに賃貸し,Bが甲建物をCに転貸し,それぞれ引渡しがされた場合には,甲建物の設置又は保存に瑕疵があることによって第三者に生じた損害について,Bが占有者として損害賠償の責任を負うことはない。
- 土地の工作物の設置又は保存に瑕疵があることによってAに損害が生じ,その工作物の占有者Bが損害賠償の責任を負う場合において,Bが無資力であるときは,その工作物の所有者も損害賠償の責任を負う。
選択肢
ア 正しい。「土地の工作物の設置又は保存に瑕疵があることによって他人に損害を生じたときは、その工作物の占有者は、被害者に対してその損害を賠償する責任を負う」(717条1項本文)。「前2項の場合において、損害の原因について他にその責任を負う者があるときは、占有者又は所有者は、その者に対して求償権を行使することができる」(同条3項)。したがって、Aは、その損害について責任を負うBに対し、求償権を行使することができる。
ウ 正しい。大判昭和3年6月7日は、工作物の瑕疵が、前所有者の所有中に生じたものであっても、当該工作物を現に所有していれば、工作物の所有者としての損害賠償責任を負う旨判示している。したがって、設問の場合、Aは、甲建物の所有者として損害賠償の責任を負う。
ア 正しい。「土地の工作物の設置又は保存に瑕疵があることによって他人に損害を生じたときは、その工作物の占有者は、被害者に対してその損害を賠償する責任を負う」(717条1項本文)。「前2項の場合において、損害の原因について他にその責任を負う者があるときは、占有者又は所有者は、その者に対して求償権を行使することができる」(同条3項)。したがって、Aは、その損害について責任を負うBに対し、求償権を行使することができる。
オ 誤り。「土地の工作物の設置又は保存に瑕疵があることによって他人に損害を生じたときは、その工作物の占有者は、被害者に対してその損害を賠償する責任を負う。ただし、占有者が損害の発生を防止するのに必要な注意をしたときは、所有者がその損害を賠償しなければならない」(717条1項)。占有者が無資力であることは、免責事由とはなっていない。また、所有者が負う責任は二次的ものであり、占有者が免責される場合に生じる。したがって、設問の場合、Bが無資力であるときでも、その工作物の所有者は損害賠償の責任を負わない。
イ 誤り。「土地の工作物の設置又は保存に瑕疵があることによって他人に損害を生じたときは、その工作物の占有者は、被害者に対してその損害を賠償する責任を負う。ただし、占有者が損害の発生を防止するのに必要な注意をしたときは、所有者がその損害を賠償しなければならない」(717条1項)。「前項の規定は、竹木の栽植又は支持に瑕疵がある場合について準用する」(717条2項)。所有者が負う責任は、無過失責任である。したがって、設問の場合、Aが相当の注意をもってその管理をしていたときでも、Aが損害賠償の責任を負う。
ウ 正しい。大判昭和3年6月7日は、工作物の瑕疵が、前所有者の所有中に生じたものであっても、当該工作物を現に所有していれば、工作物の所有者としての損害賠償責任を負う旨判示している。したがって、設問の場合、Aは、甲建物の所有者として損害賠償の責任を負う。
イ 誤り。「土地の工作物の設置又は保存に瑕疵があることによって他人に損害を生じたときは、その工作物の占有者は、被害者に対してその損害を賠償する責任を負う。ただし、占有者が損害の発生を防止するのに必要な注意をしたときは、所有者がその損害を賠償しなければならない」(717条1項)。「前項の規定は、竹木の栽植又は支持に瑕疵がある場合について準用する」(717条2項)。所有者が負う責任は、無過失責任である。したがって、設問の場合、Aが相当の注意をもってその管理をしていたときでも、Aが損害賠償の責任を負う。
エ 誤り。最判昭和31年12月18日は、717条に規定する占有者には、直接占有者だけではなく、間接占有者も含まれる旨判示する。そして、Bは転貸人であるから、間接占有者にあたる。したがって、設問の場合、Bが占有者として損害賠償の責任を負う場合がある。
エ 誤り。最判昭和31年12月18日は、717条に規定する占有者には、直接占有者だけではなく、間接占有者も含まれる旨判示する。そして、Bは転貸人であるから、間接占有者にあたる。したがって、設問の場合、Bが占有者として損害賠償の責任を負う場合がある。
オ 誤り。「土地の工作物の設置又は保存に瑕疵があることによって他人に損害を生じたときは、その工作物の占有者は、被害者に対してその損害を賠償する責任を負う。ただし、占有者が損害の発生を防止するのに必要な注意をしたときは、所有者がその損害を賠償しなければならない」(717条1項)。占有者が無資力であることは、免責事由とはなっていない。また、所有者が負う責任は二次的ものであり、占有者が免責される場合に生じる。したがって、設問の場合、Bが無資力であるときでも、その工作物の所有者は損害賠償の責任を負わない。
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問題文正答率:50.00%
第29問 過失相殺及び損益相殺に関する次のアからオまでの各記述のうち,判例の趣旨に照らし正しいものを組み合わせたものは,後記1から5までのうちどれか。
- 被害者の過失を考慮するためには,被害者に自己の行為の責任を弁識するに足りる知能が備わっていることを要する。
- 内縁の夫が運転する自動車に同乗していた者が,内縁の夫と第三者の双方の過失による交通事故で負傷し,第三者に対し損害賠償を請求する場合において,裁判所は,損害賠償の額を定めるに当たり,内縁の夫の過失を被害者側の過失として考慮することはできない。
- 複数の加害者の過失及び被害者の過失が競合する一つの交通事故において,その交通事故の原因となった全ての過失の割合(いわゆる絶対的過失割合)を認定することができるときには,絶対的過失割合に基づく被害者の過失による過失相殺をした損害賠償額について,加害者らは連帯して共同不法行為に基づく賠償責任を負う。
- 被害者に対する加害行為と加害行為前から存在した被害者の疾患とが共に原因となって損害が発生した場合において,当該疾患の態様,程度などに照らし,加害者に損害の全部を賠償させるのが公平を失するときは,裁判所は,損害賠償の額を定めるに当たり,過失相殺の規定を類推適用して,被害者の疾患を考慮することができる。
- 不法行為により死亡した被害者の相続人が加害者に対し不法行為に基づく損害賠償を請求した場合,裁判所は,生命保険契約に基づいて給付される死亡保険金の額を,損益相殺により損害賠償額から控除することができる。
選択肢
ア 誤り。最判昭和39年6月24日は、「被害者たる未成年者の過失をしんしゃくする場合においても、未成年者に事理を弁識するに足る知能が具わっていれば足り、未成年者に対し不法行為責任を負わせる場合のごとく、行為の責任を弁識するに足る知能が具わっていることを要しない」とする。したがって、被害者の過失を考慮するためには、被害者に自己の行為の責任を弁識するに足りる知能が備わっていることを要しない。
イ 誤り。最判平成19年4月24日は、「傷害を負った内縁の妻が第三者に対して損害賠償を請求する場合において、その損害賠償額を定めるに当たっては、内縁の夫の過失を被害者側の過失として考慮することができる」とする。したがって、設問の場合、裁判所は、損害賠償の額を定めるに当たり、内縁の夫の過失を被害者側の過失として考慮することができる。
ア 誤り。最判昭和39年6月24日は、「被害者たる未成年者の過失をしんしゃくする場合においても、未成年者に事理を弁識するに足る知能が具わっていれば足り、未成年者に対し不法行為責任を負わせる場合のごとく、行為の責任を弁識するに足る知能が具わっていることを要しない」とする。したがって、被害者の過失を考慮するためには、被害者に自己の行為の責任を弁識するに足りる知能が備わっていることを要しない。
ウ 正しい。最判平成15年7月11日は、「複数の加害者の過失及び被害者の過失が競合する一つの交通事故において、その交通事故の原因となったすべての過失の割合(以下「絶対的過失割合」という。)を認定することができるときには、絶対的過失割合に基づく被害者の過失による過失相殺をした損害賠償額について、加害者らは連帯して共同不法行為に基づく賠償責任を負う」とする。
イ 誤り。最判平成19年4月24日は、「傷害を負った内縁の妻が第三者に対して損害賠償を請求する場合において、その損害賠償額を定めるに当たっては、内縁の夫の過失を被害者側の過失として考慮することができる」とする。したがって、設問の場合、裁判所は、損害賠償の額を定めるに当たり、内縁の夫の過失を被害者側の過失として考慮することができる。
オ 誤り。最判昭和39年9月25日は、「生命保険契約に基づいて給付される保険金は、すでに払い込んだ保険料の対価の性質を有し、もともと不法行為の原因と関係なく支払わるべきものであるから、たまたま本件事故のように不法行為により被保険者が死亡したためにその相続人たる被上告人両名に保険金の給付がされたとしても、これを不法行為による損害賠償額から控除するいわれはない」とする。したがって、設問の場合、裁判所は、生命保険契約に基づいて給付される死亡保険金の額を、損益相殺により損害賠償額から控除することはできない。
ウ 正しい。最判平成15年7月11日は、「複数の加害者の過失及び被害者の過失が競合する一つの交通事故において、その交通事故の原因となったすべての過失の割合(以下「絶対的過失割合」という。)を認定することができるときには、絶対的過失割合に基づく被害者の過失による過失相殺をした損害賠償額について、加害者らは連帯して共同不法行為に基づく賠償責任を負う」とする。
エ 正しい。最判平成4年6月25日は、「被害者に対する加害行為と被害者のり患していた疾患とがともに原因となって損害が発生した場合において、当該疾患の態様、程度などに照らし、加害者に損害の全部を賠償させるのが公平を失するときは、裁判所は、損害賠償の額を定めるに当たり、民法722条2項の過失相殺の規定を類推適用して、被害者の当該疾患をしんしゃくすることができる」とする。
エ 正しい。最判平成4年6月25日は、「被害者に対する加害行為と被害者のり患していた疾患とがともに原因となって損害が発生した場合において、当該疾患の態様、程度などに照らし、加害者に損害の全部を賠償させるのが公平を失するときは、裁判所は、損害賠償の額を定めるに当たり、民法722条2項の過失相殺の規定を類推適用して、被害者の当該疾患をしんしゃくすることができる」とする。
オ 誤り。最判昭和39年9月25日は、「生命保険契約に基づいて給付される保険金は、すでに払い込んだ保険料の対価の性質を有し、もともと不法行為の原因と関係なく支払わるべきものであるから、たまたま本件事故のように不法行為により被保険者が死亡したためにその相続人たる被上告人両名に保険金の給付がされたとしても、これを不法行為による損害賠償額から控除するいわれはない」とする。したがって、設問の場合、裁判所は、生命保険契約に基づいて給付される死亡保険金の額を、損益相殺により損害賠償額から控除することはできない。
解説・コメント
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問題文正答率:50.00%
第30問 婚姻に関する次のアからオまでの各記述のうち,判例の趣旨に照らし誤っているものを組み合わせたものは,後記1から5までのうちどれか。
- 成年被後見人は,成年後見人の同意がなくても婚姻をすることができる。
- 婚姻の届出自体については当事者間に意思の合致があったとしても,それが単に他の目的を達するための便法として仮託されたものにすぎないときは,婚姻はその効力を生じない。
- 養親は,養子と離縁した場合には,その者と婚姻することができる。
- 女性は,前婚の解消の時に懐胎していなかった場合には,前婚の解消の日から起算して100日以内であっても,再婚をすることができる。
- A男がB女を強迫して婚姻を成立させた後に,強迫を理由として婚姻が取り消された場合には,B女がその婚姻中に懐胎して子が出生したとしても,出生した子は,A男の子とは推定されない。
選択肢
ア 正しい。「成年被後見人が婚姻をするには、その成年後見人の同意を要しない」(738条)。
イ 正しい。最判昭和44年10月31日は、「742条1号にいう」「「当事者間に婚姻をする意思がないとき」とは、当事者間に真に社会観念上夫婦であると認められる関係の設定を欲する効果意思を有しない場合を指すものと解すべきであり、したがってたとえ婚姻の届出自体について当事者間に意思の合致があり、ひいて当事者間に、一応、所論法律上の夫婦という身分関係を設定する意思はあったと認めうる場合であっても、それが、単に他の目的を達成するための便法として仮託されたものにすぎないものであって、前述のように真に夫婦関係の設定を欲する効果意思がなかった場合には、婚姻はその効力を生じない」とする。
ア 正しい。「成年被後見人が婚姻をするには、その成年後見人の同意を要しない」(738条)。
オ 誤り。「婚姻の取消しは、将来に向かってのみその効力を生ずる」(748条1項)。「妻が婚姻中に懐胎した子は、夫の子と推定する」(772条1項)。したがって、設問の場合、出生した子は、A男の子と推定される。
イ 正しい。最判昭和44年10月31日は、「742条1号にいう」「「当事者間に婚姻をする意思がないとき」とは、当事者間に真に社会観念上夫婦であると認められる関係の設定を欲する効果意思を有しない場合を指すものと解すべきであり、したがってたとえ婚姻の届出自体について当事者間に意思の合致があり、ひいて当事者間に、一応、所論法律上の夫婦という身分関係を設定する意思はあったと認めうる場合であっても、それが、単に他の目的を達成するための便法として仮託されたものにすぎないものであって、前述のように真に夫婦関係の設定を欲する効果意思がなかった場合には、婚姻はその効力を生じない」とする。
エ 正しい。「女は、前婚の解消又は取消しの日から起算して100日を経過した後でなければ、再婚をすることができない」(733条1項)。「前項の規定は、次に掲げる場合には、適用しない。一 女が前婚の解消又は取消しの時に懐胎していなかった場合」(733条2項1号)。したがって、設問の場合、前婚の解消の日から起算して100日以内であっても、再婚をすることができる。
ウ 誤り。「養子若しくはその配偶者又は養子の直系卑属若しくはその配偶者と養親又はその直系尊属との間では、第729条の規定により親族関係が終了した後でも、婚姻をすることができない」(736条)。「養子及びその配偶者並びに養子の直系卑属及びその配偶者と養親及びその血族との親族関係は離縁によって終了する」(729条)。したがって、養親は、養子と離縁した場合でも、その者と婚姻することはできない。
エ 正しい。「女は、前婚の解消又は取消しの日から起算して100日を経過した後でなければ、再婚をすることができない」(733条1項)。「前項の規定は、次に掲げる場合には、適用しない。一 女が前婚の解消又は取消しの時に懐胎していなかった場合」(733条2項1号)。したがって、設問の場合、前婚の解消の日から起算して100日以内であっても、再婚をすることができる。
ウ 誤り。「養子若しくはその配偶者又は養子の直系卑属若しくはその配偶者と養親又はその直系尊属との間では、第729条の規定により親族関係が終了した後でも、婚姻をすることができない」(736条)。「養子及びその配偶者並びに養子の直系卑属及びその配偶者と養親及びその血族との親族関係は離縁によって終了する」(729条)。したがって、養親は、養子と離縁した場合でも、その者と婚姻することはできない。
オ 誤り。「婚姻の取消しは、将来に向かってのみその効力を生ずる」(748条1項)。「妻が婚姻中に懐胎した子は、夫の子と推定する」(772条1項)。したがって、設問の場合、出生した子は、A男の子と推定される。
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問題文正答率:50.00%
第31問 夫婦に関する次のアからオまでの各記述のうち,誤っているものを組み合わせたものは,後記1から5までのうちどれか。
- 夫婦の一方が他の一方に対して有する債権について,婚姻中に消滅時効が完成することはない。
- 夫婦である父母が共同して親権を行う場合において,その一方が子を代理する権限を共同名義で行使したときは,それが他の一方の意思に反したときであっても,代理行為の相手方が悪意でない限り,そのためにその行為の効力は妨げられない。
- 夫婦の一方について成年後見開始の審判がされた場合,他の一方が成年後見人になる。
- 夫婦の一方が強度の精神病にかかり,回復の見込みがない場合であっても,裁判所は,一切の事情を考慮して婚姻の継続を相当と認めるときは,他の一方による離婚の請求を棄却することができる。
- 夫婦の一方が日常の家事に関して第三者と法律行為をした場合は,他の一方は,その第三者に対し責任を負わない旨を予告していたときであっても,その法律行為によって生じた債務について,連帯してその責任を負う。
選択肢
ア 正しい。「夫婦の一方が他の一方に対して有する権利については、婚姻の解消の時から6箇月を経過するまでの間は、時効は、完成しない」(159条)。したがって、夫婦の一方が他の一方に対して有する債権について、婚姻中に消滅時効が完成することはない。
イ 正しい。「父母が共同して親権を行う場合において、父母の一方が、共同の名義で、子に代わって法律行為をし又は子がこれをすることに同意したときは、その行為は、他の一方の意思に反したときであっても、そのためにその効力を妨げられない。ただし、相手方が悪意であったときは、この限りではない」(825条)。
ア 正しい。「夫婦の一方が他の一方に対して有する権利については、婚姻の解消の時から6箇月を経過するまでの間は、時効は、完成しない」(159条)。したがって、夫婦の一方が他の一方に対して有する債権について、婚姻中に消滅時効が完成することはない。
エ 正しい。「夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。四 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき」(770条1項4号)。「裁判所は、前項第1号から第4号までに掲げる事由がある場合であっても、一切の事情を考慮して婚姻の継続を相当と認めるときは、離婚の請求を棄却することができる」(同条2項)。
イ 正しい。「父母が共同して親権を行う場合において、父母の一方が、共同の名義で、子に代わって法律行為をし又は子がこれをすることに同意したときは、その行為は、他の一方の意思に反したときであっても、そのためにその効力を妨げられない。ただし、相手方が悪意であったときは、この限りではない」(825条)。
ウ 誤り。「家庭裁判所は、後見開始の審判をするときは、職権で、成年後見人を選任する」(843条1項)。
ウ 誤り。「家庭裁判所は、後見開始の審判をするときは、職権で、成年後見人を選任する」(843条1項)。
オ 誤り。夫婦の一方が日常の家事に関して第三者と法律行為をしたときは、他の一方は、これによって生じた債務について、連帯してその責任を負う。ただし、第三者に対し責任を負わない旨を予告した場合は、この限りでない」(761条)。
エ 正しい。「夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。四 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき」(770条1項4号)。「裁判所は、前項第1号から第4号までに掲げる事由がある場合であっても、一切の事情を考慮して婚姻の継続を相当と認めるときは、離婚の請求を棄却することができる」(同条2項)。
オ 誤り。夫婦の一方が日常の家事に関して第三者と法律行為をしたときは、他の一方は、これによって生じた債務について、連帯してその責任を負う。ただし、第三者に対し責任を負わない旨を予告した場合は、この限りでない」(761条)。
解説・コメント
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問題文正答率:50.00%
第32問 父母の離婚に関する次のアからオまでの各記述のうち,判例の趣旨に照らし正しいものを組み合わせたものは,後記1から5までのうちどれか。
- 婚姻中の父母が別居し,子と同居していない親と同居している親との間で,子との面会交流について協議が調わない場合であっても,父母の離婚前は,家庭裁判所は,面会交流について相当な処分を命ずることはできない。
- 父母が協議上の離婚をする際に,その協議により子を監護すべき者を定めたときは,家庭裁判所は,その定めを変更することができない。
- 父母の離婚により,子が母と氏を異にすることになった場合,その子が母の氏を称するためには,家庭裁判所の許可を得た上で,戸籍法の定めるところにより届け出ることが必要である。
- 子の出生前に父母が離婚した場合には,母がその子の親権者となるが,その子が出生した後に,父母の協議によって父を親権者と定めることができる。
- 父母が離婚した場合において,親権者と定められた母が死亡したときは,生存している父が,直ちに親権者となる。
選択肢
ア 誤り。最決平成12年5月1日は、「別居状態にある父母の間で右面接交渉につき協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、家庭裁判所は、民法766条を類推適用し、家事審判法9条1項乙類4号により、右面接交渉について相当な処分を命ずることができる」とする。したがって、設問の場合、父母の離婚前においても、家庭裁判所は、面会交流について相当な処分を命ずることができる。
エ 正しい。「子の出生前に父母が離婚した場合には、親権は、母が行う。ただし、子の出生後に、父母の協議で、父を親権者と定めることができる」(819条3項)。
ア 誤り。最決平成12年5月1日は、「別居状態にある父母の間で右面接交渉につき協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、家庭裁判所は、民法766条を類推適用し、家事審判法9条1項乙類4号により、右面接交渉について相当な処分を命ずることができる」とする。したがって、設問の場合、父母の離婚前においても、家庭裁判所は、面会交流について相当な処分を命ずることができる。
オ 誤り。「後見は、次に掲げる場合に開始する。一 未成年者に対して親権を行う者がないとき、又は親権を行う者が管理権を有しないとき」(838条1号)。したがって、設問の場合、親権者と定められた母が死亡したときは、後見が開始する。
イ 誤り。「父母が協議上の離婚をするときは、子の監護をすべき者、父又は母と子との面会及びその他の交流、子の監護に要する費用の分担その他の子の監護について必要な事項は、その協議で定める」(766条1項前段)。「家庭裁判所は、必要があると認めるときは、前2項の規定による定めを変更し、その他子の監護について相当な処分を命ずることができる」(同条3項)。したがって、父母が協議上の離婚をする際に、その協議により子を監護すべき者を定めたときでも、家庭裁判所は、その定めを変更することができる。
ウ 正しい。「子が父又は母と氏を異にする場合には、子は、家庭裁判所の許可を得て、戸籍法の定めるところにより届け出ることによって、その父又は母の氏を称することができる」(791条1項)。
イ 誤り。「父母が協議上の離婚をするときは、子の監護をすべき者、父又は母と子との面会及びその他の交流、子の監護に要する費用の分担その他の子の監護について必要な事項は、その協議で定める」(766条1項前段)。「家庭裁判所は、必要があると認めるときは、前2項の規定による定めを変更し、その他子の監護について相当な処分を命ずることができる」(同条3項)。したがって、父母が協議上の離婚をする際に、その協議により子を監護すべき者を定めたときでも、家庭裁判所は、その定めを変更することができる。
オ 誤り。「後見は、次に掲げる場合に開始する。一 未成年者に対して親権を行う者がないとき、又は親権を行う者が管理権を有しないとき」(838条1号)。したがって、設問の場合、親権者と定められた母が死亡したときは、後見が開始する。
ウ 正しい。「子が父又は母と氏を異にする場合には、子は、家庭裁判所の許可を得て、戸籍法の定めるところにより届け出ることによって、その父又は母の氏を称することができる」(791条1項)。
エ 正しい。「子の出生前に父母が離婚した場合には、親権は、母が行う。ただし、子の出生後に、父母の協議で、父を親権者と定めることができる」(819条3項)。
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選択肢
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第34問 相続に関する次のアからオまでの各記述のうち,判例の趣旨に照らし正しいものを組み合わせたものは,後記1から5までのうちどれか。
- 相続人が数人ある場合において,被相続人が祖先の祭祀を主宰すべき者を指定していなかったとしても,被相続人が所有していた墳墓は,遺産分割の対象とならない。
- 遺産分割は,相続の承認又は放棄をすべき期間内には,することができない。
- 複数の相続人が被相続人から賃借人の地位を承継したときは,被相続人が延滞していたその賃貸借に係る賃料債務は不可分債務となる。
- 被相続人が他人の過失による交通事故によって即死した場合でも,その事故による被相続人の精神的損害についての慰謝料請求権は,相続の対象となる。
- 遺産分割後に遺産である建物に隠れた瑕疵があったことが判明した場合であっても,その建物を遺産分割により取得した相続人は,他の相続人に対し,瑕疵担保責任を追及することができない。
選択肢
ア 正しい。「系譜、祭具及び墳墓の所有権は、前条の規定にかかわらず、慣習に従って祖先の祭祀を主催すべき者が承継する。ただし、被相続人の指定に従って祖先の祭祀を主催すべき者があるときは、その者が承継する」(897条1項)。「相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する」(896条本文)。したがって、設問の場合、被相続人が所有していた墳墓は、遺産分割の対象とならない。
ウ 誤り。昭和34年6月19日は、「債務者が死亡し、相続人が数人ある場合に、被相続人の金銭債務その他の可分債務は、法律上当然分割され、各共同相続人がその相続分に応じてこれを承継する」とする。そして、設問の被相続人が延滞していたその賃貸借に係る賃料債務は、「被相続人の金銭債務」である。なお、賃借権の共同相続後の賃料債務は、債務の目的がその性質上不可分なものとして、不可分債務となる(430条、大判大正11年11月24日)。
ア 正しい。「系譜、祭具及び墳墓の所有権は、前条の規定にかかわらず、慣習に従って祖先の祭祀を主催すべき者が承継する。ただし、被相続人の指定に従って祖先の祭祀を主催すべき者があるときは、その者が承継する」(897条1項)。「相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する」(896条本文)。したがって、設問の場合、被相続人が所有していた墳墓は、遺産分割の対象とならない。
エ 正しい。最判昭和42年11月1日は、「ある者が他人の故意過失によって財産以外の損害を被った場合には、その者は財産上の損害を被った場合と同様、損害の発生と同時にその賠償を請求する権利すなわち慰謝料請求権を取得し、」「当該被害者が死亡したときは、その相続人は当然に慰謝料請求権を相続する」とする。したがって、設問の場合、その事故による被相続人の精神的損害についての慰謝料請求権は、相続の対象となる。
イ 誤り。「共同相続人は、次条の規定により被相続人が遺言で禁じた場合を除き、いつでも、その協議で、遺産の全部又は一部の分割をすることができる」(907条1項)。遺産分割は、原則としていつでも行うことができる。
エ 正しい。最判昭和42年11月1日は、「ある者が他人の故意過失によって財産以外の損害を被った場合には、その者は財産上の損害を被った場合と同様、損害の発生と同時にその賠償を請求する権利すなわち慰謝料請求権を取得し、」「当該被害者が死亡したときは、その相続人は当然に慰謝料請求権を相続する」とする。したがって、設問の場合、その事故による被相続人の精神的損害についての慰謝料請求権は、相続の対象となる。
イ 誤り。「共同相続人は、次条の規定により被相続人が遺言で禁じた場合を除き、いつでも、その協議で、遺産の全部又は一部の分割をすることができる」(907条1項)。遺産分割は、原則としていつでも行うことができる。
オ 誤り。「各共同相続人は、他の共同相続人に対して、売主と同じく、その相続分に応じて担保の責任を負う」(911条)。したがって、設問の場合、建物を遺産分割により取得した相続人は、他の相続人に対し、担保責任を追及することができる。
ウ 誤り。昭和34年6月19日は、「債務者が死亡し、相続人が数人ある場合に、被相続人の金銭債務その他の可分債務は、法律上当然分割され、各共同相続人がその相続分に応じてこれを承継する」とする。そして、設問の被相続人が延滞していたその賃貸借に係る賃料債務は、「被相続人の金銭債務」である。なお、賃借権の共同相続後の賃料債務は、債務の目的がその性質上不可分なものとして、不可分債務となる(430条、大判大正11年11月24日)。
オ 誤り。「各共同相続人は、他の共同相続人に対して、売主と同じく、その相続分に応じて担保の責任を負う」(911条)。したがって、設問の場合、建物を遺産分割により取得した相続人は、他の相続人に対し、担保責任を追及することができる。
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第35問 遺産分割に関する次のアからオまでの各記述のうち,判例の趣旨に照らし正しいものを組み合わせたものは,後記1から5までのうちどれか。
- 共同相続人A及びBのうち,Bが遺産分割協議書を偽造して,相続財産である甲不動産についてBへの所有権移転登記をした場合,Bは,Aの相続回復請求権の消滅時効を援用することができない。
- 被相続人が,共同相続人A及びBのうち,Aに甲不動産を相続させる旨の遺言を残して死亡し,その遺言が遺産分割の方法の指定と解される場合であっても,AB間の遺産分割協議を経なければ,Aは甲不動産を取得することができない。
- 被相続人は,禁止期間を限定したとしても,遺言で遺産の分割を禁ずることはできない。
- A及びBが共同相続した甲不動産をAが遺産分割協議により取得した場合において,相続開始から遺産分割までの間に甲不動産について生じた賃料債権は,その協議で特に定めなかったときは,Aに帰属する。
- 共同相続人である子A及びBが被相続人である父Cの唯一の相続財産である甲不動産について遺産分割をした後,認知の訴えにより,DがCの子であるとされた場合において,Dが遺産分割を請求しようとするときは,Dは,価額のみによる支払の請求権を有する。
選択肢
ア 正しい。最判昭和53年12月20日は、共同相続人のうちの1人又は数人が、他の共同相続人の相続権を侵害している場合に、相続権の侵害をしている相続人が、これを知っているか又は自己に相続権があると信じることに合理的な事由が認められない場合には、相続回復請求権の消滅時効を援用することはできない旨判示している。したがって、設問の場合、Bは、Aの相続回復請求権の消滅時効を援用することはできない。
ウ 誤り。「被相続人は、遺言で、遺産の分割の方法を定め、若しくはこれを定めることを第三者に委託し、又は相続の開始の時から5年を超えない期間を定めて、遺産の分割を禁ずることができる」(908条)。
ア 正しい。最判昭和53年12月20日は、共同相続人のうちの1人又は数人が、他の共同相続人の相続権を侵害している場合に、相続権の侵害をしている相続人が、これを知っているか又は自己に相続権があると信じることに合理的な事由が認められない場合には、相続回復請求権の消滅時効を援用することはできない旨判示している。したがって、設問の場合、Bは、Aの相続回復請求権の消滅時効を援用することはできない。
オ 正しい。相続の開始後認知によって相続人となった者が遺産の分割を請求しようとする場合において、他の共同相続人が既にその分割その他の処分をしたときは、価額のみによる支払の請求権を有する」(910条)。したがって、設問の場合、Dが遺産分割を請求しようとするときは、Dは、価額のみによる支払の請求権を有する。
イ 誤り。最判平成3年4月19日は、遺言が遺産分割方法の指定と解されるケースで、特段の事情のない限り、何らの行為を要せず、被相続人の死亡の時に直ちに当該遺産が当該相続人に相続により承継される旨判示している。したがって、設問の場合、AB間の遺産分割協議を経ることなく、Aは甲不動産を取得することができる。
ウ 誤り。「被相続人は、遺言で、遺産の分割の方法を定め、若しくはこれを定めることを第三者に委託し、又は相続の開始の時から5年を超えない期間を定めて、遺産の分割を禁ずることができる」(908条)。
イ 誤り。最判平成3年4月19日は、遺言が遺産分割方法の指定と解されるケースで、特段の事情のない限り、何らの行為を要せず、被相続人の死亡の時に直ちに当該遺産が当該相続人に相続により承継される旨判示している。したがって、設問の場合、AB間の遺産分割協議を経ることなく、Aは甲不動産を取得することができる。
エ 誤り。最判平成17年9月8日は、「遺産は、相続人が数人あるときは、相続開始から遺産分割までの間、共同相続人の共有に属するものであるから、この間に遺産である賃貸不動産を使用管理した結果生ずる金銭債権たる賃料債権は、遺産とは別個の財産というべきであって、各共同相続人がその相続分に応じて分割単独債権として確定的に取得する」「上記賃料債権の帰属は、後にされた遺産分割の影響を受けない」とする。したがって、設問の場合、相続開始から遺産分割までの間に甲不動産について生じた賃料債権は、A及びBに帰属する。
エ 誤り。最判平成17年9月8日は、「遺産は、相続人が数人あるときは、相続開始から遺産分割までの間、共同相続人の共有に属するものであるから、この間に遺産である賃貸不動産を使用管理した結果生ずる金銭債権たる賃料債権は、遺産とは別個の財産というべきであって、各共同相続人がその相続分に応じて分割単独債権として確定的に取得する」「上記賃料債権の帰属は、後にされた遺産分割の影響を受けない」とする。したがって、設問の場合、相続開始から遺産分割までの間に甲不動産について生じた賃料債権は、A及びBに帰属する。
オ 正しい。相続の開始後認知によって相続人となった者が遺産の分割を請求しようとする場合において、他の共同相続人が既にその分割その他の処分をしたときは、価額のみによる支払の請求権を有する」(910条)。したがって、設問の場合、Dが遺産分割を請求しようとするときは、Dは、価額のみによる支払の請求権を有する。
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問題文正答率:50.00%
第36問 人の死亡に関する次のアからオまでの各記述のうち,正しいものを組み合わせたものは,後記1から5までのうちどれか。
- 代理権を授与した本人が死亡しても,代理権は消滅しない。
- 寄託者が死亡した場合,返還時期の定めがあり,その期限が到来していなくても,受寄者は寄託物を返還することができる。
- 使用貸借は,貸主の死亡によっても,その効力を失わない。
- 組合員は死亡によって脱退する。
- 受遺者が遺言者よりも先に死亡したときは,受遺者の地位は,相続により受遺者の相続人に承継される。
選択肢
ア 誤り。「代理権は、次に掲げる事由によって消滅する。一 本人の死亡」(111条1項1号)。
イ 誤り。「返還の時期の定めがあるときは、受寄者は、やむを得ない事由がなければ、その期限前に返還をすることができない」(663条2項)。そして、寄託者が死亡した場合は、「やむを得ない事由」には該当しない。
ア 誤り。「代理権は、次に掲げる事由によって消滅する。一 本人の死亡」(111条1項1号)。
オ 誤り。「遺贈は、遺言者の死亡以前に受遺者が死亡したときは、その効力を生じない(994条1項)。
イ 誤り。「返還の時期の定めがあるときは、受寄者は、やむを得ない事由がなければ、その期限前に返還をすることができない」(663条2項)。そして、寄託者が死亡した場合は、「やむを得ない事由」には該当しない。
ウ 誤り。使用貸借は、貸主の死亡によっては終了しない。なお、「使用貸借は、借主の死亡によって終了する(597条3項)。
ウ 誤り。使用貸借は、貸主の死亡によっては終了しない。なお、「使用貸借は、借主の死亡によって終了する(597条3項)。
エ 正しい。「前条の場合のほか、組合員は、次に掲げる事由によって脱退する。一 死亡」(679条1号)。
エ 正しい。「前条の場合のほか、組合員は、次に掲げる事由によって脱退する。一 死亡」(679条1号)。
オ 誤り。「遺贈は、遺言者の死亡以前に受遺者が死亡したときは、その効力を生じない(994条1項)。
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問題文正答率:50.00%
第37問 物の保存又は財産の管理についての注意義務に関する次のアからオまでの各記述のうち,正しいものを組み合わせたものは,後記1から5までのうちどれか。
- 特定物の引渡しを目的とする債権の債務者は,債権者に受領遅滞があった場合であっても,善良な管理者の注意をもって,目的物を保存する義務を負う。
- 特定物の引渡しを目的とする債権の債務者が負う目的物の保存の義務は,特約により軽減することができる。
- 贈与契約の贈与者は,目的物の引渡しまでの間,自己の財産に対するのと同一の注意をもって,目的物を保存すれば足りる。
- 相続人は,相続の承認又は放棄をするまでの間,その固有財産におけるのと同一の注意をもって,相続財産を管理すれば足りる。
- 限定承認者は,善良な管理者の注意をもって,相続財産を管理する義務を負う。
選択肢
ア 誤り。「債権者が債務の履行を受けることを拒み、又は受けることができない場合において、その債務の目的が特定物の引渡しであるときは、債務者は、履行の提供をした時からその引渡しをするまで、自己の財産に対するのと同一の注意をもって、その物を保存すれば足りる」(413条1項)。受領遅滞がある場合、債務者が負う義務は、「自己の財産に対するのと同一の注意」義務である。
ウ 誤り。「債権の目的物が特定物の引き渡しであるときは、債務者は、その引渡しをするまで、契約その他の債権の発生原因及び取引上の社会通念に照らして定まる善良な管理者の注意をもって、その物を保存しなければならない」(400条)。贈与の目的が特定物の場合、贈与者の負う義務は、「善良な管理者の注意」義務である。
ア 誤り。「債権者が債務の履行を受けることを拒み、又は受けることができない場合において、その債務の目的が特定物の引渡しであるときは、債務者は、履行の提供をした時からその引渡しをするまで、自己の財産に対するのと同一の注意をもって、その物を保存すれば足りる」(413条1項)。受領遅滞がある場合、債務者が負う義務は、「自己の財産に対するのと同一の注意」義務である。
エ 正しい。「相続人は、その固有財産におけるのと同一の注意をもって、相続財産を管理しなければならない。ただし、相続の承認又は放棄をしたときは、この限りでない」(918条1項)。
イ 正しい。「債権の目的物が特定物の引き渡しであるときは、債務者は、その引渡しをするまで、契約その他の債権の発生原因及び取引上の社会通念に照らして定まる善良な管理者の注意をもって、その物を保存しなければならない」(400条)。同条は、任意規定であるから、これと異なる特約をすることは可能である。
エ 正しい。「相続人は、その固有財産におけるのと同一の注意をもって、相続財産を管理しなければならない。ただし、相続の承認又は放棄をしたときは、この限りでない」(918条1項)。
イ 正しい。「債権の目的物が特定物の引き渡しであるときは、債務者は、その引渡しをするまで、契約その他の債権の発生原因及び取引上の社会通念に照らして定まる善良な管理者の注意をもって、その物を保存しなければならない」(400条)。同条は、任意規定であるから、これと異なる特約をすることは可能である。
オ 誤り。「限定承認者は、その固有財産におけるのと同一の注意をもって、相続財産の管理を継続しなければならない(926条1項)。限定承認者が負う義務は、「その固有財産におけるのと同一の注意」義務である。
ウ 誤り。 「債権の目的物が特定物の引き渡しであるときは、債務者は、その引渡しをするまで、契約その他の債権の発生原因及び取引上の社会通念に照らして定まる善良な管理者の注意をもって、その物を保存しなければならない」(400条)。贈与の目的が特定物の場合、贈与者の負う義務は、「善良な管理者の注意」義務である。
オ 誤り。「限定承認者は、その固有財産におけるのと同一の注意をもって、相続財産の管理を継続しなければならない(926条1項)。限定承認者が負う義務は、「その固有財産におけるのと同一の注意」義務である。
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ア 誤り。「未成年者が法律行為をするには、その法定代理人の同意を得なければなら」ず(5条1項本文)、同意を得ずに行った「法律行為は、取り消すことができる(5条2項)。未成年者については成年被後見人と異なり(9条ただし書)、日常生活に関する行為について取り消すことができない旨の規定は置かれいない。
イ 正しい。成年後見人の法律行為については、未成年者、被保佐人(13条1項)及び被補助人(17条1項)と異なり、同意を要する旨の規定は存在せず、同意の有無に関係なく常に取り消すことができる。